日プのオオカミちゃん (ページ13)

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くっつき虫がふたーり3 ページ13

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来る者拒まず去るもの追わず。

その諺がそっくり似合う人がこの世にAちゃん以外にいるんだろうかと思うくらい、『自分のところを去りたい人を引き止めるようなことはしないし、自分のところへ信じてやって来る人は、すべて受け入れる』、Aちゃん。これはiPadでさっき調べた、この諺の正しい意味だ。

もっとよく読めば『自分のこだわりを捨て、他人の意志を尊重する』なんてことも書かれていて、やっぱりAちゃんみたいだな、と思った。

……まあ西くんとか匠海くんとかには若干自分の意志を無理やり貫いてる感じはするけど。

「お疲れー俊司。良かったよ、めちゃくちゃ」

俊「っ、ほんとですか？」

「うん、ほんまに。お疲れさまでした」

俊「……ありがとうございます。俺、ぜったいAちゃんと、Aクラスに残りたいです」

「せやな。……わたしも、がんばるわ」

正直言って、なんで自分がAクラスにいるんだろうっていう悩みは完全にゼロになるまではさすがに消えなかった。

46位っていう低い順位からスタートして、そしたらAクラスになって、周りはみんな、Aちゃんも含めて上位の順位の人達ばっかりで。

ここにいていいのかな、みたいな感情がぐるぐる心の中に渦巻いていて、最初はすごく、苦しかった。

「えー、大神A、大阪府出身21歳。よろしくお願いします」

でも、なんにも言わず寄り添ってくれたAちゃんとか、「もっと自信持っていいよ」って言ってくれた将吾くんとか、いっつも元気だった西くんとか、

みんなに支えられて、俺は。

Aちゃんが、舞う。

Aちゃんの踊りは、舞みたいに綺麗だなって、ずっと思っていた。

男特有の踊りとか、女特有のとか、そういうので分けたくはないけどでも、Aちゃんのダンスは女性らしい体のしなやかさとそもそものセンス、抜群のリズム感、それに自発的に加えられたそれらとアンバランスすぎる力強さが上手い具合に混ざっていて、言葉で表せられないくらい、綺麗で。

尾「いや歌上手すぎやろ……」

……おまけに歌も歌えるなんて、この人には、もう弱点なんて、ないんじゃないかって。

それでもAちゃんはたまに、どこでもない、だれがいるわけでもない場所を、ジッと見つめて静かに1人で、動かなくなったりする。

「っはー……ありがとうございました…」

ねえAちゃん。僕はいつか、そんな君を助けてあげられたりはするのかな。