第3話 1と500 ページ5
-
「……ええ天気や」
屋上に一脚しかないベンチに仰向けになり、太陽に手をかざす。
そんな今日は朝から運悪く先生に捕まってしまい、それはもうウォータースライダー並に長い説教をされた。
髪を黒に染めろから始まって、サボってしまうのはなぜかを語られ、挙句の果てには教育論まで。
めんどくさい。そういうのがめんどくさいねん。別に先生の授業を邪魔してるわけちゃうのに。
大人の言葉はどれもこれもが薄っぺらい。
＿＿ カラン、…カラン、カラン、
「……何か御用ですか」
起き上がらず目を開けてそう言うと、その人物はベンチの背にもたれるようにして覗き込んできた。
「おめぇ長い説教されとったなあ」
……やっぱり蒲生くんか。
「嫌味言いに来たならお帰りください」
「あれだけ好き勝手に言われて言い返したくならんのか」
「ああいうタイプは1喋ったら500くらい返ってくるから」
「そういうもんか」
「そういうもん」
蒲生くんの声はなんだか低くて落ち着く音程で、目を瞑りながら聞いていると眠ってしまいそうになる。
子守唄歌われたら速攻で寝そうや。
「……お、」
すると、またカラン、カラン、と音がしたかと思ったら頭を突然持ち上げられた。
ストン、と落とされて目を開けると、見えるのは蒲生くんの首と顎。
「どうじゃ、ワシの膝枕は」
「……普通に固い」
「逆にやわらけえ言われたらびっくりするところじゃったわ」
「てかバランス悪い。あぐらで膝枕とか聞いたことないんやけど」
「昨日の礼を言いに来たんじゃ」
突然そう言った彼の顔には、そういえば絆創膏がいくつか貼ってある。
その時少し風が吹いて、切れ長の目が見えた。
「ありがとうな、佐野」
太陽が眩しくて、撫でられた頭は暖かくて、その目はすごく、優しくて。
なんとなく起きるタイミングを逃した私は仕方なく、ゆっくりと目を閉じた。
「鳴山先輩にタテつくのもうやめときや」
「それ瀬戸にも言われたわ」
「ならええけど」
「……瀬戸も佐野もええやつじゃな」
「……瀬戸に関してはアホなだけやと思うけど」
「確かにアホそうな顔しとるけえ」
-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 12人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
牧高(プロフ) - 最高すぎますこの作品……！！更新されるのを心待ちにしております。 (5月27日 12時) (
レス) @page13 id: 40bd569e74 (このIDを非表示/違反報告)
屯(プロフ) - ガッちゃん最高です。この作品が大好きです。これからも応援しております…！ (2018年1月24日 10時) (レス) id: 4528bb8581 (このIDを非表示/違反報告)
白クラゲ(プロフ) - 赤磐 葵さん» ご指摘ありがとうございます (2017年12月16日 21時) (レス) id: 17b3d066f2 (このIDを非表示/違反報告)
赤磐 葵(プロフ) - すみません、時々名前が矢野になっている気がします (2017年12月16日 18時) (レス) id: 33bb3dddb0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：反映 x他1人 | 作成日時：2017年12月16日 3時
