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パン屋に入ったら同期と再会って誰が想像できただろうか。






「元気…と言われると微妙ですがまあ、そこそこです。あなたは?」


『見て分かる通り元気だよ。…ちょっと話す時間ってあったりする?』


「少しなら。」




お互いにパンを購入し(伊地知の分もしっかり買った)、パン屋から出てちょっと先のところにある公園のベンチに座る。




『初めてあのパン屋行ったけどさ、良いところだね。いつもあそこなの?』


「職場が近いので、必然的に。…通うつもりですか?」


『まさか。今日はたまたま任務でここが近かっただけだよ。多分もう来ないんじゃないかな。』


「そうですか。」




七海が教えてくれたカスクートを一口食べる。うん、さすが七海。見る目があるね。美味しい。



「何か、話すことがあるんじゃないんですか。」


『…うん。七海、私ね怒ってるの。なんでだか分かる?』


「呪術師を辞めたことですか?」


『残念!不正解。正解は何も言わずにいなくなったこと、でした〜。』


「それについては、申し訳ないと…『だめです。謝って許されるなら呪術師も警察もいりませーん。』…。」




謝られて終わりにしていいほど単純なものではないのだ。

七海は大したことないと思っていても私には大事。





『灰原くん、覚えてるよね。』


「もちろん。忘れられるはずがないじゃないですか。」



悔しそうに顔を歪める七海。


灰原雄は、七海と二人で行った任務で殉職した。

私はそれを二人とも無事で必ず戻ってくるものだと信じて疑わず送り出してしまったのだ。


もう、戻ってくることはないというのに。
















七海が呪術師を辞める直前、お互いに別々の任務が入っていた。

その時私に入っていた任務は三日かかるもので、七海は二日かかるものだった。



いつも通り送り出して、いつも通りに任務をこなして、いつも通り教室に帰った。

なのに、七海はそこにいなかった。



あの時の焦りようは自分で思い返すと恥ずかしい程だった。

電話もかからない、高専のどこにもいない、先輩も全員ちょうどいなくて、先生に聞いてもはぐらかされた。



世界が途端に憎くなった。景色が真っ暗に見えた。









きっと、絶望していたんだ。


こんな世界に。


また、油断して失った自分自身に。

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作者名:Blue Stella | 作成日時:2020年11月1日 22時

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