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七海が呪術師を辞めた。






そう聞いたのはいつだったか。ちょうど呪術高専を卒業した時だっただろうか。




最近会ってないなと思って家入先輩に聞いたら



「七海は随分前に呪術師を辞めた。一般企業に就職するそうだ。」



と言われた。



ショックだった。七海だけはいなくならないとそう、信じていたのだ。




カッコ良くて大好きだった先輩…夏油傑は謀反を起こし呪詛師に。

いつも笑顔で私と七海の心の支えだった同期…灰原雄は殉職し、今はもうここにはいない。



一つ上の五条先輩の代も私たちも1人減って2人になってしまったのだ。

それなのに、それなのに…














『なーんで辞めちゃったかねぇ…。』



あれからだいたい十年くらい経ってすっかり大人になった今、唐突に思い出した。

それもこれも仕方のないことなのだ。



ここ最近あまりにも忙しすぎる。

その度に今七海がいたらコンビ技で決めれたのにとか、三人揃ってればトリプル攻撃であと十分は早く終わってたなーとか。

辛い時に限ってそう思い出すことが多くなる。



特に最近は五条先輩といると思い出す。
ちょっぴり、いや大分絡み方がウザイ。

助けて七海。私もうこの人の相手無理かも。つらたん。






「Aさん。」


『どうしたん。伊地知ぃ。五条先輩の世話はしてやんねーぞ。』


「いえ、そうでなくて。次の任務なんですが、昼食を先にとったほうがいいのではと思いまして。」


『なんか美味しいお店でもあるの?』


「何やらここらへんに美味しいパン屋があるだとか。パン、お好きでしょ?」


『よくわかってんじゃん。よっしゃ、ちょっと行ってくる。伊地知は車で待ってて。何食べたい?』


「惣菜パンで。」


『かしこまり〜。』



車から降りると、うん確かにパンのいい匂いがする。

その匂いを辿っていくと可愛らしいパン屋さんがあった。


なるほど、ここね。



カランカランといい音のするベルがなって店に入ると、

そこには宝と言ってもいいぐらいの美味しそうなものばかりが並んでいた。



マジうまそうじゃん。伊地知GJ。


トレイとトングを手にとりあえず伊地知の惣菜パンから探そうとぐるりと店内を見回す。


『ん?これは…。』






「カスクート。フランス発祥の惣菜パンです。…随分久しぶりですね。Aさん。五年ぶりぐらいですか?」


『十年ぐらいだよ久しぶりだね七海。元気してた?』

3→←薄氷を踏む《七海建人》



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作者名:Blue Stella | 作成日時:2020年11月1日 22時

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