検索窓
今日:7 hit、昨日:15 hit、合計:78,015 hit

3 ページ24

「私との約束って嘘だったの?」



季節が一周回った頃だった。

流石に時間がかかりすぎてとうとうそう言われてしまった。

一年は、俺たち呪霊にはたいしたことのない時間だが人間には相当長い時間なのだろう。



『実はもう実験は終わったんだ。』


「本当!?じゃあ…」


『うん、こっちおいで』



その言葉に従って嬉しそうに来るそいつはなんだか愛らしく見えて。

信頼しているのだろう。そりゃそうだ。一年も共にいるんだから。




「やっと…やっとこの時が来たんだ。嗚呼やっとこれで自由になれる…!」


『おめでとう。それは良かった。』









頬に触れる。ゆっくりと撫でれば嬉しそうに目を細めて。

手に触れる。握れば期待するように目を輝かせて。

髪に触れる。サラサラとしてまるで絹糸みたいで。

首に触れる。いよいよだと強張らせる姿はとても可愛くて。









嗚呼こんなにも愛らしい存在に俺は手をかけるのか。



そう思うと何故だか寂しかった。

さびしい?何故?



…分からない。わかるわけがない。愛着が出るわけないのだ。

一度も名前を呼んでいないのだから。







試しに彼女を抱き寄せてみる。

その状態でもう一度頬に、手に、髪に、首に触れる。


あたたかい。

当然だ。彼女はまだ生きている。






俺が生かしてしまっている。






ああ駄目だ。

俺に彼女は殺せない。殺すことができない。



いつの間にか愛してしまっていたのだ。

一度も名前を呼んでいなかったのに。

今日初めて触れたのに。




首に触れていた手を離して彼女をしっかりと抱きしめる。





『A』




「どうしたの?真人くん」




『A。AAA…!』




ああ、確かに一度呼んでしまうともっと愛しくなってしまう。









ごめん。俺は、もう駄目なんだ。









.









好きだよ。もう殺してあげない。死なせてあげないから。









「嘘つき。」









.









もう一度Aを強く抱きしめた。

4〈解説〉→←2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (55 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
95人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 短編集
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Blue Stella | 作成日時:2020年11月1日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。