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荷物は既に運び出されていてほぼ何もない状態の部屋｡
｢この部屋とももうお別れだ｡｣
新｢…もう､おかえりなさいも言えないんですね｡
正直寂しいです…｡｣
一緒に帰って来たにーやんもしんみり顔｡
｢そんな顔せんで｡
あ､そうそう｡あれ､もうにーやんにあげるから｡｣
新｢え…？｣
あのでかいテレビを指さす｡
新｢なんで持って行かなかったんですか。｣
｢新しい部屋狭いねん｡せやから､あげる｡｣
戸惑いながらもお礼を言うにーやん｡
Aさんそろそろ寝ないとですね｡と部屋と後にする｡
新｢…あ｡Aさん｡いってらっしゃい｡｣
ペコリと一礼｡
｢にーやん…うん｡いってきます｡｣
そうして翌日私は新天地､東京へ旅立った｡
｢うあ､どうしよう人見知り激しくてもう無理｡｣
道に迷って一瞬で心が折れた｡
｢人多すぎ､ビル多すぎ…｡｣
皆標準語で喋っとるのも違和感しかない｡
屋敷に連絡して部屋まで連れて行ってもらった｡
屋｢そんな調子で大丈夫かお前｡｣
｢アカンかも…ちょっと帰りたい｡｣
屋｢今日からここがお前の帰る場所やで〜｡｣
確かに｡これが所謂ホームシックならぬ大阪シックか！
しばらくは新しい環境に慣れようと必死で
毎日漫才をするだけでいっぱいいっぱいだった｡
ふと数週間後我に返った｡
盛山さんに色んな話聞いてもらいたい｡
九条からの喫煙所トークダイジェスト聞かせて欲しい｡
にーやんのおすすめ映画が見たい｡
なによりリリーさんに会いたい｡
だけど､連絡すると大阪に帰りたくなってしまいそうで
スマホから手を離した｡
石井さんもそんな気持ちになったから
私への連絡は控えていたのかもしれない｡
それにしても
いつからなんやろう｡
リリーさんを意識するようになったのは｡
リリーさんの事を考えてばかり
そんなとき電話が鳴った｡
｢もしもし｡｣
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作者名：あまから | 作成日時：2021年7月28日 21時
