#36 ページ36
なんでこういう時に限って
離れたくないなんて思ってしまうんやろ｡
抱きしめ返したい気持ちをグッと堪えた｡
｢では､また劇場で｡｣
リ｢一日付き合ってくれてありがとう｡またな｡｣
そう言ったリリーさんの表情はどこか寂し気だった｡
笑ってたけど違う｡それは分かる｡
それはデート体験が終わってしまったから？
それとも私が大阪を離れるから？
…そしてまたも関門｡
新｢おかえりなさ…Aさんその目どうしたんですかっ｣
｢にーやんに残念なお知らせがある｡｣
新｢えっなんですか？｣
｢私､来週引っ越す｡｣
新｢へっ…えっ？どこへですか？
俺の隣が嫌になったからですか？？｣
｢そんな訳ないやん｡東京進出や｡｣
新｢へっあぁ東京…そう､ですか…｡｣
｢だからもう家で映画鑑賞できひんなるわ｡
今の内に観たいもの観においでな｡｣
新｢…は､はい…｡
いや､はい｡ちゃうわ！映画なんかどうでもええ！
Aさんと会えんなるの俺いやや…！｣
｢嫌やって言われても…｡｣
いきなり抱き寄せられて
新｢行かんといてください｡｣
腕に力が込められる｡
｢にーやん…｡
そんなに私の事…｡｣
新｢…Aさんやっと気づいてくれました!?
そうです俺､ずっとAさんの事…｣
｢めちゃくちゃに慕ってくれてたんやなぁ！
ごめんな｡ほんまに｡｣
新｢ちゃいますよ！いや､ちゃうことないけど！
俺は…！｣
言葉を詰まらせるにーやん｡
新山｢俺は…｡｣
｢なに？｣
新山｢…好きなんですよ……Aさんの…っ
………料理が｡｣
｢いっつもおいしそうに食べてくれるもんな(笑)
分かった｡そんなに好きなら大阪泊まりの日は作りに来てあげるわな｡｣
この後､にーやんが独り
"俺の馬鹿ぁ"と呟いたことは知る由もない｡
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作者名：あまから | 作成日時：2021年7月28日 21時
