#23 ページ23
石｢やっぱり病院行かんかったんやな｡｣
家の数メートル手前､石井さんが待ち構えていた｡
｢ストーカーですか｡｣
石｢読みが当たっただけや｡｣
部屋に勝手に上がってきて､
石｢服脱げ｡｣
｢ほんまに良いです｡
自分でします｡｣
石｢安心せぇ｡お前の下着姿に興味は無い｡｣
｢……腕上がらないので､
手伝ってもらって良いですか…｡｣
手伝ってもらいながら服を脱ぐ
そしたら、肩から腕にかけてパンパンに腫れていた｡
石｢痛そう…｡｣
一度別れてからの少しの間にドラッグストアにでも行ったのだろうか｡
冷却スプレーと湿布などでしっかり手当してくれた｡
石｢よし｡これでしばらく安静にしとき｡｣
服を着せてくれながらそう言った｡
｢ありがとうございます｡｣
漫才師になったばかりの事を思い出す｡
この人が一番最初に私を可愛がってくれた先輩だからだろう｡
なのに､上京した途端全く連絡も何もしてくれなくなった｡
それがとてつもなくショックで悲しかった｡
どこかで石井さんに構って欲しいと思ってたのかも知れへん｡
今なら､あの日のにーやんの言動が理解できる｡
帰ろうとする石井さんの服を引っ張り､
｢もうちょっとだけ､居てくれませんか｡｣
一緒に居たいんです｡
色んな話､したいです｡
石｢…ええよ｡｣
｢あの…東京行ってから､私を誘わなくなった理由はあるんですか？｣
石｢別にないよ｡一人で都内のカフェ巡りが趣味になっただけ｡
お前も忙しそうやから誘えへんなーって思うて…気にしてたん？｣
｢気にしますよ…！｣
石｢分かった｡次､お前が東京の仕事ある日にご飯行こう｡
それで許してくれ｡｣
｢絶対ですよ｡｣
指切りで約束をした｡
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作者名：あまから | 作成日時：2021年7月28日 21時
