いっそ嫌いと言ってくれ 【土方十四郎】

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「こんな別嬪さんがいるなんて知らなかったなァ〜...具合悪いの？どれ、おじさんが介抱してあげようか」

「いやあの私、キャバ嬢じゃなくて客なんで...」



男は私が抵抗出来ないのをいい事に強引に肩を組み、そのまま何処かへ連れて行こうとする。
酔いが回って力が出ない...足が縺れる。最悪だ...こんな酔っ払い野郎の腕なんて素面なら簡単に振り払えるはずなのに。
角を曲がれば其処は厠だ、個室に連れ込まれでもすれば逃げ場はない。完全に詰みだ。






「おいオッサン...ソイツぁやめとけ」





救世主はいつも、音もなく現れる。

すらりと高い身長に鋭い眼光。分厚いV字型の前髪。心地良い低音に全身を流れる血液がどくんと脈打つ。



「な、何だお前ェ...！？この娘は俺の、」

「悪いこた言わねェ、やめとけ...その女に関わると禄なことねーぞ。確かに見てくれこそ女だが口は悪ィわ愛想はねェわ、一般人にも平気で剣先向ける血に飢えたクソガキだからな。...手ェ引いて貰えるか」
 


懐に手を入れ突き出したソレには見覚えがある＿＿警察手帳だ。真選組副長、という大層な肩書きを目にするなり男の顔からみるみる血の気が引いていく。

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