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「ちょっと腫れてんな」
服を捲って露わになった皮膚に手を添える。
それが、冷えた身体には余計優しく感じてビクッとしてしまう。
「わり、痛かった？」
見上げるような視線に、咄嗟に首を振った。
「でも、自分でやるのはしんどい....かも」
今にも泣きそうな顔で俯く。
わしゃわしゃ髪を撫ぜて北斗の手から落ちそうになる注射器を手際良くセットし、左腕に駆血帯を巻いて消毒を済ます。
「なんかあっても責めんなよ、久しぶりだし」
針の行方を追い、一瞬顔を引き攣らせる北斗。
「、、っへたくそ」
瞬き一つすると溜まっていた涙が一筋流れ、それを指で掬う樹。
「そんなにほしかった？キャンディ」
俯いて首を振る。
下から押し上げるようにそっと重ねられる唇。
ほんのり香るいちごミルク。
「口が寂しそうだったから」
「....っもう、今じゃない」
はにかむ樹の手元できらきら光るキャンディ。
樹の首筋に顔を埋めると、頭を優しく覆ってくれた。
「明日先生のとこ行けよ？」
ｺｸｯと頷く。
「ついてくか？」
また、ふるふると首を振る。
「ひとりでへーき」
「学校は？」
「行った。保健室だけど」
「偉いじゃん」
震えていた背中が少し波打って樹の肩を濡らす。
「ははっ、今日も情緒が危ないなぁ」
どうやら毎日身に付けて身体の一部にしておかないと暴れだして、こっちだよって手を引いて導いてあげないとすぐ迷子になるらしい。
そろそろ首輪でもつけておこうか。
ふわふわの髪にもう一度唇を落とした。
小さくなったキャンディがガリッと音を立てて溶けていく。
🍓〘いちごミルク味〙
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作者名：珠有 | 作成日時：2020年12月26日 0時
