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「……へぇ!ついに、かぁ!!」
咄嗟に声が発せず、返事が遅れた。
え、サラッと言い過ぎちゃうん。なんて一瞬考えたけど、こいつ大学受かった時の報告もこのテンションやったっけ。
「ついに。24歳にして、初カレ」
相手はAと同じ会社の先輩なんやとか。俺よりもまだ1つ上。
その後もベラベラと惚気話を続けてたけど、興味の無かった俺は聞いてる振りだけ。
「でねでねっ?来週末の夜、お家に呼ばれたの。初めて。それってさ、そういうこと……とかあったりするのかな??」
後半になるにつれ、ごにょごにょと喋る彼女。
……へ?家に、呼ばれとる……??
「3ヶ月になるんやっけ……まぁなくもないかもな」
なくもない、いや、完全にアリ。
なんとなく肯定しきるのは癪で、俺も言葉を濁した。
「やっぱり、そうなのかなっ?え、そうなのかな!」
目に見えて嬉しそうな表情を浮かべてる。自身の体の底の方から、ふつふつと沸いてくる不快感。
半分以上中身の残った缶を机に置くと、思ってたより大きい音が鳴った。
「知らんけど、何でそんなに喜んどるん」
どう考えても八つ当たりでしかないその言葉。自身の口から出るそれに、内心戸惑いつつも止められない。
「なぁ、何でそんなに危機感ないん?嬉しいん??」
「嬉しいよ」
即答。間髪入れずに返ってきたその答え。
「あの人のこと、大好きだから。愛してる……から」
恍惚。そう表わすんがぴったりかな。
幼い頃からずっと隣におった俺に、1度も見せたことのなかったその表情。いつもの無邪気さ、幼さを失った、大人の女性の顔。
Aをこんな綺麗にさせとるんは、誰なん??
その人は、Aに何をしようとしとるん……??
そう思うと、言葉に出来へんような恐怖に襲われて、我慢ならんくなって。
遠くを見つめうっとりしている彼女を強引に引き寄せ口付けた。
2度、3度、角度を変えて重ね、肉厚な上唇にちゅうぅと吸い付く。
想像の何倍も、柔らかくて、甘い。
……無理、溶けそう。
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ゆう(プロフ) - 嫉妬系がすごく好きです!頑張ってください! (2019年9月1日 3時) (レス) id: 550f8769db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サク | 作成日時:2019年8月29日 15時