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しかし彼らが宣伝に出てくれたお陰で私達の店は大盛況。
私は表には出ず、坂田くん達が立ってるちょうど背後の仕切りの裏で洗い物や後片付けに勤しんでた。
「……なぁなぁ」
接客がひと段落着いたらしい坂田くんが、仕切りの隙間からするりとこちらに入ってきた。いつの間にやってもらったのか、髪の毛がさっきよりもかっこ良くセットされてる。
「どうしたの?」
「休憩、しよ」
言うが早いか私の手を掴んで教室を出て、ずんずんと歩き出す坂田くん。
「ちょっと。どこ行くの??」
「やから休憩。Aちゃんずっと働いてるもん」
「あのっ、せめて手は離さない……??」
周りの目が痛いよ。ほら、あの下級生らしき女の子、私に対してあからさまに敵意剥き出し……。
と思ってたら坂田くん、ちょうどその子に向かって ❝なぁ。今、席2つ空いとる??❞ って。
「空いてます、けど。坂田先輩、その人彼女??」
「さぁね。……❝A❞、入るで」
「あっ、私お財布取ってこなきゃ」
「奢るに決まっとるやんか。ほら、早く。お腹空いた!」
手を繋いだまま教室に入って席に着き、また顔見知りらしき男の子に ❝三色団子2つ〜❞。
本当に顔が広いなぁ。流石、校内有名人。
「おわ、うんまそ!!」
注文して間もなくやってきたお団子に目を輝かやかせかぶりつく坂田くん。そんなにお腹空いてたんだ。
思わずその姿にカメラを向けると、すかさずピースする彼。
「ふふ、何か恋人同士みたいや」
「ごめっ、そんなつもりじゃ……」
「ううん、嬉しい。2人でも撮ろ??」
坂田くんもスマホを取り出し、内向きカメラにして正面に手を伸ばす。
私はと言うとさっきの ❝嬉しい❞ を脳内で延々とリピート。
「えー、もうちょっと寄って」
「やっ……、あの、顔近い!!」
ほっぺがくっつきそうなくらいの近距離。
「よっしゃ、メイド服も見れたし一緒にお茶したし、おまけに写真も撮れた。満足満足〜」
「え?」
「メイド喫茶やりたいって言うたん、俺」
自分の顎元に人差し指を向けてはにかむ坂田くん。
……それって。
「そろそろ戻ろか!流石に怒られるなぁ!!」
「っあ、ちょっと」
今度は私を置いて教室を飛び出し、人をかき分けて逃げ去る坂田くん。
振り回されっ放しじゃないか。……でも。
期待、してもいいのかな。
文化祭の季節ですね。
地味っ子ポジで変わり者の夢主ちゃんと、坂田さん。ひたすら甘やかしてくれます。
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ゆう(プロフ) - 嫉妬系がすごく好きです!頑張ってください! (2019年9月1日 3時) (レス) id: 550f8769db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サク | 作成日時:2019年8月29日 15時