ラテより甘い恋の味松/村/北/斗 (ページ10)

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次の日
私はいつも通りバイト、松村さんもいつも通りやってきてラテを頼み、席につく。

昨日の今日で松村さんと話すのは少し気が引けたので、特に何も会話しないまま退散する、つもりだった。

「どうぞ、ラテです。」
「ありがとうございます、あの、これ…」

そう言って松村さんは、私の手に小さな封筒を持たせこう言った。

「田中さん？って人に昨日怒られちゃったんで、手紙で笑」

内緒ですよ？ってはにかみながら人差し指を口に当ててしーっとする仕草に思わずキュンとする。
顔に熱が集まっていくのがわかり、ぺこりとお辞儀だけして急ぎ足でその場を後にし厨房へ飛び込んだ。

封筒にはきれいな字で「Aさんへ」と書かれている。その手紙を自分の鞄に大切にしまい、いやでも上がる口角を必死に抑えながらまた仕事に戻った。

家に帰って手を洗い、ソファに何故か正座して封筒と向き合う。
あまりの嬉しさに気を使っていてもやはり顔が緩みすぎてしまっていたのか、樹に「A先輩どうしたんすか」なんて引かれてしまったが気にしないことにする。

緊張と嬉しさで震える手を抑えながら封筒を開けると、単調な柄の手紙とともにさらに一回り小さい封筒が入っていた。

まずは手紙を読んでみる。

Aさんへ

突然のお手紙ごめんなさい。
昨日、あなたが男の店員さんにあなたが連れて行かれてから、少し考えました。確かにお店の中で、しかもあなたは店員で俺の相手ばっかしてる暇はないのにいつも話してしまっていたなと思ったんです。
だからお店の外であなたとお話がしたいと思って手紙を書いてみました。もしよろしければ、俺と一緒に今度開かれるサイン会、いきませんか？同封されてるもう一つの封筒にはチケットが入ってます。
良いお返事が聞けるのを楽しみにしています。もし無理なら断ってくれて全然大丈夫です、お返事待ってます。

松村北斗

最後まで読み終わった瞬間、嬉しさで胸がいっぱいになり、思わず手紙を抱きしめる。
好きな人からの手紙ってこんなに嬉しいんだな～なんて小学生の日記みたいな感想が出てくる。

部屋の中は私一人なのでずっと口角が上がっている。
いつも以上に丁寧な字でお返事を書きながら、次のバイトの日とサイン会の当日のことを思い浮かべて幸せな気持ちになった。

高地さんに「樹くんと行ってくれば？」なんて言われたことなどすっかり忘れてしまっていた。