ラテより甘い恋の味松/村/北/斗 (ページ5)

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「いやあの、さっき俺の本見てこれ好きって言ってたから、好きなのかな…って」

語尾に近づくにつれてどんどん小さくなっていく声に、なぜか安心した。
この人も私と同じ類のいわゆる「人見知り」なのだろうと思った。

「そうです、この作者さん、本当にいいお話しか書かなくて大好きなんです。だからなんで人気ないんだろう、もっと出ればいいのにっていつも思ってます笑」
「ですよね！？2つ前に出した小説とか鳥肌ものでしたよ、読みました？俺あれが一番大好きなんですよ～。Aさんはどの作品がお好きなんですか？」

人見知りの特徴である早口マシンガントークを何とか聞き取ったが、一つ疑問が生まれる。

「…なんで私の名前を？」
「あ、すみません、ネームプレート見て、つい。Aって可愛らしい名前だなっていつも思ってました」

って俺きもいな！なんて自虐ツッコミしながら悪いことをしたと思って落ち込んでいる彼は、何だか犬みたいだと思ってしまった。
それより「名前が可愛らしい」という彼の言葉が頭を埋めつくす。
そんな私の考えを遮るかのように、彼は話を続けた。

「Aさん、またきますね。あなたが嫌じゃなければ本の話、もっとしましょう」
「ぜひ！えっと…」
「名前まだでしたね、松村北斗っていいます」
「松村さん、またのご来店お待ちしております。本の話いつでも待ってます！」

それじゃ、と笑顔で手を振って帰っていく松村さん。
そのすぐ後に帰るのは気が引けたので、少し時間を空けてから店を出る。

外は夕日に照らされて赤く染まっていた。そして私の頬も、先程のことを思い出して赤く染まる。

「…まつむら、ほくと、さん」

ぼそっと声に出して彼の名前を呼んだ瞬間、顔に熱が集まっていくのが嫌でもわかって、これが恋なのだろうかとバカなことを考えながら空を仰いだ。