ラテより甘い恋の味松/村/北/斗 (ページ4)

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「おまたせしました」
「あ、ありがとうございます」

読んでいた本を閉じて律儀に目を見てお礼を言ってくれるから、運びがいがある。
ラテを置いたとき、ふと視界に彼が読んでいた本の表紙が目に入る。

(あ、これ)

「…？どうかしました？」
「え？あ、ごめんなさい！この本私も好きで、というかこの作者さんが好きで、でもあんまり読んでる人見たことないから驚いたっていうか…って何言ってんだ、すいません忘れてください！ごゆっくりどうぞ！」

半ば逃げるようにその場を立ち去って厨房に入る。やってしまった、と思った。
いきなり店員にこの本好きなんですなんて言われたら困るのも当然だし、そもそもお客様のものをジッと見てしまったことに対して罪悪感が芽生える。

「Aせんぱーい？シフトの時間とっくにすぎてますよ～？」

田中くんの声で我に返る。
そうだ、もうシフト終わってるんだ。今日はもうあの人と会うのは気まずいからとっとと退散しようと思い、そそくさと荷物をまとめて店長と田中くんに挨拶をして厨房を出たときだった。

どんっと誰かにぶつかり、その勢いでそのまま後ろに倒れる…と思ったが、気づいたら男の人の腕の中だった。

「ごめんなさい、大丈夫ですか？」
「私こそ前見てなくてごめんなさ…」

悪いことはたて続けに起こるらしく、私がぶつかったのは運悪く今一番会いたくないさっきの男の人だった。

すごく綺麗な顔が至近距離にあってぼーっとしていたのも束の間、わりと恥ずかしい姿勢にあることを思い出してすぐさま距離をおき、すいませんでしたとお辞儀をして恥ずかしさでそのまま走り去ろうとした時、グッと腕を掴まれた。

「あ、あの、本、好きなんですか？」
「…へ？」

思いもよらない言葉に変な声が出た。