ラテより甘い恋の味松/村/北/斗 (ページ22)

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-樹side-

家に帰ってから手も洗わずにソファーにダイブして天井を見上げる。

先輩が変な奴らに絡まれていたから、それを助けようとしたのにコーヒーをかけられてしまい結局何も出来なかった。
松村はそんなどうすることもできない俺らを救ってくれた上に、本当は俺がやるはずだった先輩を抱きしめる役まで取られてしまった。

あの時、初めて勝ち目がないと確信した。いや違う、先輩が松村以外を選ぶはずないなんて薄々感づいていたのに、見て見ぬ振りをしたのは俺。

だから、少しだけ意地悪をした。この程度なら許してよ、って思って。

先輩のおでこにキスをして、そのまま自分の腕の中に閉じ込め、先輩を困らせるだけの、自分勝手な告白をした。

「ねえA先輩、俺女遊びやめたんです」
「そ、なの？どうして急に…？」

鈍感な先輩には通じないのが余計愛おしくて、可愛くて、気持ちが報われないことの辛さからさらに強く抱きしめた。

そのあとのことはあまりよく覚えていないけど、俺は見逃してなんかいなかった。

「俺別に諦めた訳じゃないから。あいつにスキがあったら全然あんたのこと奪うから」

そう言った瞬間、顔が真っ赤になってたこと。
やっぱりかわいい、さすが俺をトリコにした女だな～なんて感心する。

松村と先輩がこれからそういう関係になるのなんて時間の問題だろう。俺にはもう関係ない。
初めてのバイト先で出会った先輩に恋して振られるなんて、ベタなのだろうか。

俺にたくさんのことを教えてくれた人、大好きだったよ。これからも先輩後輩でありたいって言ってくれたのは嬉しいけど、まだ無理そうっすよ俺笑

だから今日だけは

「っ、だっせーな、俺」

そう呟いた途端、天井がボヤけた。