ラテより甘い恋の味松/村/北/斗 (ページ3)

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｢なんだお前、入れてねぇよ｣
｢じゃあこれはなんですか？｣

透き通った声が聞こえた方を振り向くと、涙でぼんやりしている視界には、背が高い男の人。
その人はお客さんのポケットを指さして

｢お姉さん、これ見てください、砂糖のゴミ｣
｢あ、ほんとだ…｣
｢彼女はちゃんとブラックのコーヒーを持ってきたんじゃないんですか？｣
｢…そうだよ｣
「謝ってください。」
「悪かったよ」

お客さんはそう言うと荒々しく席を立ち、お店を出て行ってしまった。シーンとしていた店内にまた賑わいが戻り、私もハッとして彼の方を向く。

「あ、ありがとうございました、初めてでどうしていいか分からなくて…」
「気にしないでください、お怪我とかなくてよかったです。」

では、と言ってお店の真ん中の席に帰っていく。

「Aさん！大丈夫！？」
「高地さん！もう大丈夫です、すみません…！」

うちのお店の店長の高地さんが今頃慌てて飛び出してきた。
店長登場遅いよなんて言えるわけもなく、一人でよかった～と安堵している店長の時差加減に苦笑しながら、先ほど助けてもらった彼の方を向く。

涙で滲んでいたせいで先程はよく見えなかった彼の顔は、少し離れた距離からでもオーラを感じるくらいのイケメンだった。
銀縁の丸メガネをかけて本を読んでいるその姿に、目を奪われてしまった。

気づけばあのときから、好きだったのかな、なんてね。