ラテより甘い恋の味松/村/北/斗 (ページ18)

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バイト先でいつも見ている雰囲気とは全然違う先輩がいて、あいつといるところなんて見たくもないのにあまりの綺麗さに目を奪われた。
だから気づいたら声をかけてしまっていた。

「…A先輩？」
「…え？樹？なんで…」
「俺はサイン会に行ってました、先輩も？」
「あ、うん」

そこから広げられる話題も特になくてその場に立ち尽くしていると、あいつが俺に話を振ってきた。

「Aさんの後輩さんですか？俺は松村北斗と言います。”初めまして”」

初めまして？こいつこの間俺が言ったことまさか忘れてる？でも先輩のいる前でそんな話したくなくて大人しく名前を伝える。

「…田中樹です」
「あなたも同じ作家さんが好きだなんて奇遇ですね。また今度お店に伺った時お話ししたいです」
「そうっすね、じゃ俺はこれで」

顔は笑っていても、明らかに目の奥が笑ってないのがよくわかった。

松村さんにとって俺は2人の時間を奪う邪魔者でしかないから。

お店で話したいというのもこの場を早く退いて貰うための口実でしかないのだろう。俺だって話すのは御免だ。

家に帰る途中の横断歩道で赤信号で止められている間に、スマホの連絡帳を開く。
先輩以外の全ての異性の連絡先をまとめて選択し、赤く表示された｢ブロック｣のボタンを押した。

青に変わったので再び歩き始める。

松村さんと先輩はおそらく両思いで、俺の入る隙なんて多分ない。

でも、それでも、A先輩を俺のものにしたいと思うのは、俺のわがまま？