ラテより甘い恋の味松/村/北/斗 (ページ17)

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厨房に入ってから、自分のしてしまったことに気づく。

先輩になんて説明すればいい？先輩が男と話してるの見て嫉妬して無理やり引き離しました？
そんなこと絶対言えない。流石にダサすぎるだろ。

恥ずかしさとイライラとよくわからない感情が入り混じるが、とりあえず謝らないと、と思い目を合わせないまま口を開く。

「A先輩、さっきは急に呼び捨てして、すいませんでした」
「ううん、私の方こそ仕事中なのによくなかった。止めてくれてありがとう、田中くん」

“田中くん”って呼び方、いつになったら変えてくれるんですか。俺は下の名前呼びなのに。

「…樹」
「え？」

くるりと振り替えると、戸惑っている先輩と目が合う。大きくてくりくりしたその目が愛おしくて、思わず手を握ってしまった。

「俺A先輩のこと下の名前で呼んでるのに、いつまでも田中くん呼びは嫌です。せめて、樹って、呼んで欲しい」

語尾になるにつれて小さくなってく自分の声が情けなく感じる。
それでも先輩は頷いてくれて、俺は安心して微笑んだ。

心のどこかで、何となくあいつより有利になったと思っていた。

次の日、俺は先輩からサイン会にあいつと行くことを聞かされた。とても楽しそうに話してくれて、俺はアドバイスすることしか出来なかった。
なんとなく客席の方を見ると、あいつと目が合う。
慌てて目を逸らしてきたことになんとなく腹が立って、俺はあいつの前に座った。

「A先輩のこと、好きなんすか？」
「…え？」
「実は俺もなんすよね。でも悪いけど、あんたに渡す気ないんで」

俺なりの、彼に対しての宣戦布告だった。

そして今日、余ったチケットをどうするべきか考えた結果、他の女と行ってもどうせつまらないだろうし、たまには一人で行ってみるかと思い、サイン会に向かった。

そして帰り際に喫茶店に寄ったら、2人がいた。