ラテより甘い恋の味松/村/北/斗 (ページ11)

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-北斗side-

割と勢いであんな手紙を書いて、図々しくチケットまで入れて手紙を渡してしまったは良いが、引かれてはないだろうか…。
そんなことを思いながら、店に入る。

ここの店のバイトが固定制で本当に良かったといつも思う。少し通えば彼女のいる日なんて一発でわかってしまうからありがたい。
Aさんのいる日にだけやってくる俺は相当気持ち悪い客なんだろうなと思いながら今日も笑顔で対応してくれるAさんに癒される。

手紙の返事、少しは期待してるだなんて伝えたら、あなたはどんな顔をするんだろうね。

最近はAさんのことを考えすぎて本が全然進まなくなってしまった。しおりの位置が同じ場所から動いていないことに気づかれてないか不安になる。

「松村さん、お待たせしました。あとこれも…」
「ああ、ありがとうございます」

彼女は俺に可愛らしい封筒を渡し、失礼します！と勢いよく頭を下げるとそそくさと厨房へ戻って行ってしまった。

ラテを一口味わってから、慎重に封筒から手紙を取り出す。

松村さんへ

この間はお手紙ありがとうございました。
お誘いもありがとうございます。私も気になっていたので、ぜひ松村さんと行きたいです。
それに私ももっとたくさん松村さんとお話ししたいなと思っていたので、すごく嬉しかったです！
当日楽しみにしてます。

A

思わず机の下でガッツポーズをする。
人生で初めての、好きな人とのデート。考えるだけで心が躍る。
一人なのに顔がゆるゆるになっているのに気づき、深呼吸をして心を落ち着かせた。

ふと厨房の方を見ると、田中さんと仲良さげに話すAさんを見て、心が少し痛んだ。
その時あまりにも俺がガン見しすぎていたからか、田中くんと目があってしまった。

慌てて目を逸らしたが、少し経つとAさんではない、甘ったるい男物の香水をつけた人が目の前に座った。

「A先輩のこと、好きなんすか？」
「…え？」

唐突に投げかけられた質問に応えられないまま、彼は、田中さんは続けた。

「実は俺もなんすよね。でも悪いけど、あんたに渡す気ないんで」

じゃ、と田中さんは帰っていった。

そのあとのことはよく覚えていない。気付いたら、Aさんとのデート当日になっていた。