枯、『怖れ』 ページ2
.
「お婆さん、ごめんなさい」
一言声をかけて、私は足早に奥へ進む。
アイツの、気配。
確かに感じたの。
どくん、どくん、と心臓の鼓動が聞こえる。
段々早くなっていくと感じるのは気の所為だろうか。
何であれ、気の所為であるならどれだけ良いか、店の奥に進み埃っぽい其処でしゃがんだ。
震える両手で震える身体を抱き締める。
ああ、君はいつまで、いつまで私を苦しめれば
「………近くにいる？」
私の肩に、彼の大きな手が触れた。
思わずびくりと震えて、振り返る。
「わ、かんない」
目を伏せて、ふるふると首を振った。
でも、本当に今、確かに……、
善逸君は私の目線に合わせるようにしゃがみ、然し私から目を逸らして何かを考えるように眉間に皺を寄せていた。
そしてもう一度、私に目を向ける。
「ちょっと待ってて」
そう言って、彼は立ち上がる
が、その足が進む事は無かった。
「やだ、やだ、行かないで……！」
そんな情けない声を上げて、私が彼の隊服を掴んだからである。
目に涙を溜め、嫌嫌と首を振る私の精神年齢は本当に幼くなってしまったのかと思う。
でも駄目なの、行かないで、私をここに置いて行かないで。
お願いだから、優しい手を離さないで。
手は震えている。
染み付いた恐怖に慄き、意思とは関係なく身震いしている。
見つかってしまえば二度と、二度とこんな曇天でさえ、空を拝む事が出来なくなる。
明らかな激情型であり最早独占欲の化身とも呼べるアイツによって、四肢を拘束されるか斬り取られるかされた上に何処かに幽閉されるか、それか惨たらしく嬲られ殺されて終わり。
どちらにせよ私の未来は真っ暗だ。向かう所死しかない、見つかってしまえばお仕舞いだ、何もかも消えて無くなる。
埃っぽい其処でぎこちなく息を吸い、少量吸い込んでしまったのかけほ、と咳き込む。
そんな私を、彼は抱き締める。
「大丈夫。落ち着いて、俺は何処にも行かない。君が願うのなら俺は、ずっと君の側にいるから」
「……、っ……」
幼子をあやすかの様な優しい声。
彼は力強く私を抱き締める。縋り付くように、震える手を彼の背に回した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4314人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆら(プロフ) - あああああああああああ更新停止いい！続きが気になる、、、 (2023年4月29日 23時) (
レス) @page25 id: ab3ad11547 (このIDを非表示/違反報告)
餅 - 流石にこれは最高すぎる、、、、もうなんか好きすぎて何て言葉にすればいいのか、とにかく好きです！！更新まってます😢 (2022年10月10日 12時) (レス) @page25 id: cda9a90c6e (このIDを非表示/違反報告)
名無し - いや最高すぎる 、、ストーリーから夢主の性格まで全て含めて最高 … 。面白すぎてめっちゃ読んでたらこんな時間になってしまっていた笑笑 更新待ってます 、！！！ (2021年12月28日 2時) (レス) @page25 id: 541045445a (このIDを非表示/違反報告)
雷霞 - 何度も読み返させて頂いてます、数ある善逸夢小説の中で1番好きです、大好きです…!! 善逸もかっこいいんですけど夢主さんの性格が好きすぎます…っ!! (2021年8月1日 22時) (レス) id: 423a130570 (このIDを非表示/違反報告)
みき - 続きを切実に所望します (2021年7月3日 23時) (レス) id: 37a3449760 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱんこ
| 作成日時：2019年9月18日 23時
