近玖、『あめふるまち』 ページ44
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彼のくれた羽織の袖をきゅっと握る。
彼の温もりと、彼の匂いが残っていた羽織。
「空はからす、月は隠れて見えない。でも善逸君はいる。どうしようねぇ」
「……どうして鴉?」
「助けてくれた。こんな私をね、助けてくれたの。因みに私がさっき泣いてたのはカラスに泣かされたからなんだぜ」
「えっ、鴉に!?」
「あの子口悪いから」
「……確かに口悪いやつもいるけど」
「うふふ」
さんかく。変わった模様の黄色い羽織の袖を引っ張って淡々と話す。「うふふ」なんて言ってみたが口角を上げただけの到底笑顔とは呼べない表情である。それになんだか話に纏まりが無い。
何処へ行った、私の感情。なんか前みたいにふわふわしてる。どうしてだろうね?
「お婆さん、今言った色が全部混ざった傘は有りますか」
「無いねぇ」
「何なら金ぴかの傘とか無いですか」
「無いねぇ」
「金箔」
「無いねぇ」
「かみなり」
「無いねぇ」
「AちゃんAちゃん、無茶振りは止そう。流石にこんな所に金箔とか無いと思うな」
「掘り出し物的な感じで有れば良いなって思、
…………………ッ!」
突如。嫌な気配がした。
何かは分からない、でも確かに、何かが。
外を見る。ぱらぱらと雨が降っている。
若干の小雨。傘を差すか否か、迷うほどの雨量。
色取り取りの傘を差して、街を闊歩する人達。
嫌な、予感が。
「どうしたの?」と聞く善逸君にちらりと視線だけを寄越し、店の奥へ入り込んだ。
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葵羽〜best friend group〜(プロフ) - 善逸の誕生日ということで、「善逸君はぴば!」のお話を見にきました…何回読んでも面白い…凄く好きです…! (2020年9月3日 14時) (レス) id: bccf6ec4c9 (このIDを非表示/違反報告)
聖 - 面白いです!更新頑張ってください! (2019年9月17日 20時) (レス) id: 5aaa39b99e (このIDを非表示/違反報告)
もこ - とてもすき! (2019年9月17日 12時) (レス) id: fcbb1370f0 (このIDを非表示/違反報告)
まえむ - え、鴉かっけぇ…続きが気になりすぎます!!!更新頑張ってください!! (2019年9月17日 1時) (レス) id: 572cac2bfb (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 更新ありがとうございます!何だかハラハラする展開…!続きも気になります(o>ω<o) (2019年9月15日 5時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱんこ | 作成日時:2019年9月1日 11時