コーヒー / リタ・カニスカ ページ9
『リタ様!』
Aが私のそばにいて、いつものように笑ってくれる。
それだけで嬉しい。
もっふんと話していても、仕事で疲れた私の髪を撫でている時も、ずっと私に笑いかけてくれていて。
Aが笑ってくれるなら、それ以上に望む事は無い。
私はAが好きだ。
永遠に一緒にいたいなんて思ってしまったり。
私のキャラじゃないから口にはしないが。
……でも。
Aが涙を流している。
そんな時、私はどうすればいいのだろうか。
渡す言葉が上手くは見つからない。
ならば行動で示せば良いだろう。
しかし、伸ばした手を引っ込めてしまった。
こんな風だから、秘めた思いが伝わらない──否、伝えられないのだ。
そう反省しても、なかなかAに伝えられない。
長い付き合いだ。
今更友達、という関係を壊したくない。
Aはきっと私のことはそう見えているだろう。
諦めきれない。 好きだ。
そんな気持ちはまるでこぼれたコーヒーのように広がっていくのだ。
まだ言えない。 まだ言わない。
でも、いつかは言わないといけない。
誰かを好きになるのに理由はいらないと言うが。
私は未だAに伝えない理由を探している。
「……はぁ」
『リタ様、どうかした?』
「……別になんでもない」
いつまでも隠しているそれは、日が経つにつれ大きくなっていく。
そんなある日、私はAの家に行くことになった。
私たちはシュゴッダムに降り立ち、Aの家へと向かう。
もう少しでAの家に着く。
何か言えないのか。 沢山Aといるには。
「A……少し遠回りして行かないか?」
絞り出した言葉はこれだった。
Aは不思議そうにしつつもいつも通りに笑顔で頷く。
瞬間、爽やかな風が私たちを包んだ。
まるで風が後押ししたかのように。
でも、好きなんて言葉はまともに使えたことがないのだ。
Aといるうちに苦い気持ちがあるのも事実で。
好きなのに、こんなに好きなのに。
「私はずっとAのこと──」
なんて言ってもAには届かない。
今はただ無邪気に笑っていてほしい。
そう思い、手招きする愛しい奴の元へ向かった。
コーヒー / スガシカオ
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