7、同僚 ページ7
「A、なんか疲れてる?これ飲んで」
『あー、きんとき。ありがとう……っくしゅん』
しっかり風邪をひいてしまい、同僚から心配され栄養ドリンクを差し入れられる始末。良い奴だ。
『土日全然休めてなくて……。話、聞いてくれるか?』
猫を拾ってからの出来事をかいつまんで説明する。もちろん、人間になるとかいう怪奇現象の事は隠して。
『ソイツ、気づかないうちにベッドに潜りこんできてさ。服も俺の勝手に着るし、かと思えば出て行っちゃって、雨の中探しに行ったり』
「……それは大変だったね?」
『そうなんだよ。悪気は無いんだろうけどスキンシップが多くて。昨日だって一緒にお風呂入りたいってゴネられたり』
「…………へぇ?」
最初はにこやかに話を聞いてくれていたきんときの顔がだんだん曇っていくような、目の奥が濁っていくというか。初めて見たぞその顔。
『ごめん、愚痴ばっかで面白くなかったよな』
「いや、違う違う。……いつの間に、彼女なんて出来たんだろうって思って」
『え?……あ!違う!猫!猫を拾ったんだって』
トンデモないすれ違いをしていたようで、彼女の惚気話に聞こえていたらしい。主語の大事さを改めて実感した。
「あ、なんだ猫か!良かった……」
ぱあっと顔を綻ばせて笑うきんとき。
『あれ、そんな猫好きだっけ?』
「そこま……いや、猫超好きなんだよね。ねぇ、今度見に行っていい?」
『え、あー…………都合が合えば、いいけど』
変に断るのも誤解を産みかねないとその場しのぎで承諾する。いざ実現してもぶるさんには事情を説明して上手くやり過ごせばいいだけ。
「やった、めっちゃ楽しみ。ふふ、猫かぁ」
『最近飼い始……住み始めたばっかだからすぐは無理だけど』
「そうだ、アイツ犬飼ってるし、ペット関係なら詳しいんじゃない?」
顔を向けた方に居るのは顰め面でPCを眺めるスマイルさん。視線に気づいたのか、心底嫌そうな顔をして背けられた。ろくに会話もしたことないのに、嫌われているんだろうか。
『接点なさすぎて声かけれないって』
「えー、あいつもゲーム好きだし共通点はあるから、話し合うと思うけどな」
『うーん……そんなに言うならがんばって声かける、けど。困ってたら助けろよ?』
「あはは、どうしようかなー?」
昼休憩が終わる前に声をかけてみるか。
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作者名:ぱすた | 作成日時:2023年8月16日 19時