【男主】猫、時々、人間。【WT】 (ページ5)

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5、くしゃみページ5

『とりあえず、シャワー入ってください』

大雨にうたれ、びしょ濡れのぶるさんに声をかける。ずっと外に居ただろうから体は冷えきっているだろうし。

「Aが先に入りなよ。風邪ひいちゃうよ」

どちらが先に入るか押し問答が始まった。どうしてこんな事に時間を取られなきゃならないのか。

『俺はレインコート着てたし、ぶるさんのほうが寒いでしょ』

「僕は平気だから！Aが入ってよ」

くだらない言い合いをして埒が明かない。だんだんイライラしてきたところで、ぶるさんが突然ぱっと目を見開いて。

「あじゃあさ！一緒に入ればいいんじゃない？僕天才？」

『……は？』

「昨日も僕のこと洗ってくれたんだしいいじゃん！行こ～！」

手を引っ張られて洗面所へ連行される。見かけによらず力が強くて、あっという間に目的地へたどり着く。何が悲しくて男と混浴しなくちゃならないんだ！

「おぉ、昨日と目線が違って新せ……ﾍｯｯﾌﾞｼｭ！」

『えっ』

「……ニャー……」

服の中から顔を出す、昨日拾った猫。

『……なん、っは？』

マジック？
目の前から男が消えて、猫にすり変わっている事実。

たった一瞬の情報の多さに脳がエラー警告を出す。猫を持ち上げて確認するも、どこからどう見てもただの猫。

「にゃにゃ？」

『きみは、ぶるさんなの？』

「ニャー！」

こくこくと頷く仕草。人間の言葉をちゃんと理解している。……それは昨日からそうだったか。

『……シャワー、入れる？』

尋ねれば今度はブンブン首を横に振る。

『まぁ、だろうな。はぁ』

不可抗力、一緒にシャワーに入るしかない。風邪をひかれると余計に面倒事が増えるから仕方がない。
ただ、ぶるさん＝猫が成立してしまった以上洗いにくいと言うか、気まずいが。申し訳程度に腰にタオルを巻いて浴室へ入る。

ぬるま湯をかけてマッサージするように洗えば喉をゴロゴロ鳴らして頭を押し付けてくる猫。

やっぱりただの猫なんだけどなぁ。

「ｯｸｼｭｯ」

『うわっ！？』

洗い終わったタイミングでくしゃみをした。
猫は、人間の男の姿にまた変わってしまった。

「うーん、くしゃみすると変わるのかなぁ」

『それはわかったんで、風呂狭いから出てくれませんか』

「えー、ヤダ！」

ヤダってなんだよ。洗い終わってるだろ！