【男主】猫、時々、人間。【WT】 (ページ4)

今日:3 hit、昨日:28 hit、合計:6,549 hit

4、軋轢ページ4

「ここに住むんじゃないの？」

『は？』

住む？何を言っているんだ、この男は？住む？同居すると？猫ならまだしも、素性どころか身元すら分からないこの男を？冗談ではない。

「だって僕のこと拾ったじゃん！」

『いや、確かに拾ったけど……不可抗力だったし』

「じゃあAも僕のこと見捨てるってこと？」

『う……それは……、てかそもそも猫は保健所に預けるつもりだったし、最初から面倒を見るつもりなんてなかった』

そう告げるとぶるさんはすごく悲しそうな顔をしていて、目にはうっすら涙を浮かべて今にも泣き出しそうだった。
……俺が悪いみたいじゃん。

「ふん！じゃあいいもーん！！お世話になりましたあ！」

勢いよく立ち上がるとそのままドアの方へ早歩きで向かっていく。

「玄関どっち！？」

『そ、そっち』

ばたん！！

静寂が部屋を包む。さっきまで騒がしかったのが嘘のようだ。

なんだか、どっと疲れたな。

……

…

いつの間にか寝てしまっていたらしい。

激しい雨音で目が覚めた。
外は強風、滝のような豪雨。

時計を見ればもうお昼をさしていて。

……あの人、大丈夫かな。

いやいや、俺には関係ないし。勝手に出てったのはあっちだし。

でもこのせいで……また衰弱してたら？

『……あぁもう！！！』

居ても立ってもいられず、外に出た。
心配だから？断じて違う。

ちょっとそこまで、買い物に行くだけ。

外に出れば傘が意味をなさないほど風が強い。レインコートに身を袖を通し、家の近辺を歩く。

20分くらいのところにある、小さな公園。

びしょ濡れでそこに立ち尽くす彼がそこにいた。ぼうっと空を見上げて、放心状態というべきか。

「馬鹿だなぁ、僕。」

近寄れば、振り向いた青い目と視線がかち合う。どこか気まずいけれど、決して逸らさず見つめ返す。

「え……」

『……』

「……なんで、何してるの」

『俺も、わかんないよ』

本当に、何してるんだろう。
自分で言うのもなんだが、お人好しがすぎるんだろうな。

『とりあえず一旦、お互い落ち着いて話し合いませんか』

「……」

『……行くあてもないんでしょ。野垂れ死にされたらたまったもんじゃない』

俯いた彼は、しぶしぶ頷いた。

「…………わかった」

強くなる雨の中、ぶるさんの手を引いて家へと戻る。
ずっと外にいたであろう彼の手はとても冷たかった。