2、非現実的出来事 ページ2
『もう無いからな』
「ニャー……」
大人しく食い下がった猫は、寝室に向かっていった。なんとこの猫、人のベッドまで占領しようというのか。
仕方がない、今日くらいは譲ってやろう。明日までの辛抱だ。大人しく料理の続きをして、買い込んだ酒を飲みながらラーメンを啜る。まったく、鶏肉のない白湯は物足りない。
ひとしきり身支度を終え、程よく酔いが回り眠気が襲ってきたところでベッドに入る。
『……動物ってこんなに暖かいんだ』
いつも冷えきっている布団が暖かい。
疲労も相まってすぐに夢の世界へと意識が消えた。
事件が起きたのは、翌朝の事だった。
寝返りを打とうとした所で、何かに阻まれ身動きが取れず目を覚ます。
ぼやける視界の中、ようやく意識がはっきりしてくる。
目の前に、人間。
『……は？』
「もう朝ー……？僕まだ眠いー……」
『……？？？？？』
夢、あるいは、……夢。
非現実的な出来事から目を背けたくなる。いや、可笑しいだろ。なんだこれ。なんのドッキリだよ。
眠たげに瞼を擦る男は、服を着ていない。
……え、何事？
ヤバいって、明らかに、ヤバいって。
もしや酔った勢いで……？昨晩の記憶を必死で思い出すも、帰ってからは1人だったし。目の前の男に見覚えは無いし。
飛び起きて、部屋の隅まで距離を取る。
恐怖、冷や汗。心臓が痛い。
『……だ、誰、ですか……？』
「んー、名前ぇ？ダンボールに書いてあったんだけど見てないの？」
一体なんの事やら、寝起きで上手く状況を理解できない。
『あ、あの、家を間違えたとかでは……？』
「何言ってんのさ、昨日拾ってくれたじゃん」
ますます何が何だか分からない。昨日？拾った？そんなの、猫しか……猫、しか……。
『猫ォ！！？？』
「そう！思い出した？」
目の前の男はどう見ても人間の姿かたちをしている。急いで家中探すがどこにも昨日の茶毛の子猫は居なかった。
もしかして本当に、あの男が……？
昨日拾ったダンボールを確認する。あの男が言った通り、名前らしきものが書いてあった。
"broooock"
なんて読むんだ、コレ。
「ぶるーくでも、ぶるっくでも、何でもいいよ〜ん」
『は、はぁ……って、その服！俺のじゃん！？』
「だって着る服ないんだもん」
勝手に着るな、と言いかけたが全裸で居られるよりマシか。はぁ、頭が痛い。
「お兄さんは名前なんて言うの？」
『A……です』
「A！Aね！！いい名前だね！僕好き〜」
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作者名：ぱすた | 作成日時：2023年8月16日 19時
