ファジー・スノー 2 (ページ9)

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夜、いつものピンクベージュのマニキュアを取り出した。
昨日オフした爪、素の自分の手はやっぱり何だか醜い。

肌に馴染むようなこの色はいつのまにか自分にとって必要不可欠になっていた。たまに忘れて塗り忘れると、会社でキーボードに乗る指を見るたび少しテンションが下がる。

色味があるネイルをすると、確かに可愛いのだけど指の短さが目立つような気がしてあまり楽しめないのが悩み。

休日や友達と遊ぶ時くらい楽しみたいと思うのだけど、最近はそのコンプレックスのせいで結局仕事用のままにしてしまう。

「はぁ…」

やっぱり私ってなんかつまらない。
変なため息は無意識に溢れた。

甘皮を処理し、綺麗に拭き取り
ピンクベージュを塗っていく。

綺麗な指になりたいな、そう思いながら。

そんな時、ふといつかの景色が思い浮かんで

何だかぼやっと靄がかかったみたいな気分の中、誰かの指をじっと見ていたあの光景。

ふっかの手。

マニキュアを塗る手が止まった。

私、何であんなことしたんだろう。

いくら仲のいい友達だからといって異性に気安く触れるものじゃない。何かの拍子に意図せずに触れたとかぶつかったとかでもない。

私はわざわざ彼の手を取ってそれを眺めたのだ。
自らの手を伸ばして。

確実に酔っていた。でも記憶を失うほどではなくて、どこか酒気を帯びたぼんやりとした気分の中にある記憶は頭の中に確実に存在していた。

確かにあの時はモヤモヤしていた。
楽しい気分ではなかった。

でも彼に触れることがその行動を起こす理由になんかならないはずだ。

手と手が触れる。

それは時と場合によっては男女の恋愛感情やそれを彷彿とさせる表現、行動になる。むしろあの触り方は自分で言うのもなんだけど何か含みを持たせたような触れ方だった。

そんな、色仕掛けもどきみたいな事。
私はなんで彼にしたんだ。

「…あ」

マニキュアが思いっきり手についた。
意識を戻して除光液をコットンに染み込ませる。

乾燥が気になる冬、ささくれができていた部分に除光液が染みて痛かった。

ハンドクリーム、塗ってるのに。
そう思ったけど最近ベタつくのが気になってサボり気味だったかもしれない。

「はぁ…」

無意識で出たため息。

私は一体
何に落ち込んで、何をこんな考え込んでしまっているのだろうか。