予定なし ページ30
・
「あ、そうだ。ふっかにも渡してよ」
「え？」
凛からお土産を渡しがてら遊びたいと連絡が来て。
カフェでそれらを受け取りながら思い出話を聞いていたのだけど。
「別に会う予定ないよ？」
「でも最近よく飲んでるんでしょ？」
「いや…よくって程でも…」
さっくんもだけど、うちらがそんなに頻繁に会ってるとでも思ってるのだろうか。
「さっくん経由で渡すのが確実じゃない？」
「まぁまぁ持って帰るのもあれだし、また飲みにでも誘えばいいじゃん！」
よろしくね！とニコニコ笑顔で言われてしまってはどうしようもない。2人分のお土産を持った私は帰宅後、仕方なく彼とのトークルームを開く。
「……はぁ」
でも、すんなりと送れずにいて。
一旦それを閉じてぽふんとソファに沈んだ。
分からなくなっていた。
今ふっかに、私は何を思っているんだろうかと。
あの日、駅で別れるまで2人並んで歩くその時間。ずっとドクドクと心臓の音が響いていた。
寒くて凍えそうな程だったのにどこか顔が熱いような、そうじゃないような。彼に捕らわれそうになるというか、吸い込まれそうになるというか。
学生時代、彼に恋をしていた時とはまた違った感覚なのだ。だから別に恋しているわけじゃない気がして。
でも、昔の自分と今の自分の狭間にいるような。
彼といると感情が本当に忙しくて。
辛いような、そうじゃないような。
とにかく彼といる時間が自分の中で変化していた。
何だか怖くて、気軽に会おうとする気持ちにはならない。
「はぁ…」
またため息をついた。
やっぱりお土産受け取らなきゃよかった。こっそり自分が全て食べてしまおうかと。
その貰った一つのお菓子を手に取るとずっしりとした和菓子の重みが伝わる。かなりの量を貰ってしまったので、一人分でも直ぐには食べきれない量なことに今更気づく。
渡さなきゃなぁ
そう思い直したけれど、LINEを送る気にはならない。
会いたくないなら恋をしているわけではないはずだ。
でもなんだか恋に近い感情な気もする。
でも恋をしていた時とは明らかに違う。
そもそも一度消えた感情なのだ。
定期的に顔を合わせているのに、今更そんな感情が復活するとも思えない。
なんだこのやっかいな気持ちは。
私は考えるのも疲れてしまって、もう彼にメッセージを送るのは諦めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1005人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽぷら
| 作成日時：2024年3月29日 22時
