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そんな時に失礼しまーすと店員さん。
揚げ出し豆腐と卵焼きが運ばれて来て、ふっかはありがとうございまーすとそれを受けとる。
「うまそー、頼んでくれたんだね。さんきゅ」
「…うん」
流された、アワビ。
早速と卵焼きに手を伸ばしたふっか。揚げ出し豆腐じゃなくて私が好きな卵焼きを食べたことにまた全部食べやがるんじゃないかと思う。
「…私にも残してよ？」
「じゃあ早く食べな」
フッと笑って美味しそうにパクリ。
何か色々と蘇って来てなぜかドクドクと心臓の音が響く気がした。
万が一食べられた時に…と思って反抗で揚げ出し豆腐を自分の小皿に移した私は出汁が染みているそれを２つに割る。じゅわりとお皿に流れる出汁を掬うように口に入れる。
「…んま」
初めて入ったお店。揚げ出し豆腐が過去一おいしくてちょっぴり感動。
「食べなよ、めっちゃ美味しい」
その勢いで彼の方にお皿を押すと、何を思ったのかクスッと笑われて。
「うん、ありがと」
彼もまた一つを取るとそのままかぶりつく。
んま！なんだこれ！とびっくりする様子に何で笑われたんだろうという気持ちがスッと消えた。
「ね、過去一なんだけど」
「俺も。うわー、通うわここ」
お気に入りになったらしい。
「ふ、ほらこっちも食べな。うまいよ」
そしてまたクスリと笑いながら卵焼きのお皿を押す。
何がおかしいんだろうと疑問に思いながらも一つ取って食べると、これまた美味しくて。
「ん！おいしー、ここ正解だなぁ」
何となくでチョイスしたお店だったけど、お気に入りになりそうでテンションが上がる。
「んね、またこよ」
「…ん、駅から近いしね」
「それ。あと近くにうまいラーメン屋あるの、最高じゃん」
けど、私が返事をするのにワンテンポ遅れたのは"またこよ"の言葉にあった。
ふっかは、"また"私と来ようとしているのか。
「……あ、ほら。前好きだった人」
「ん？」
「その人と来ればいいじゃん、いいお店知ってるーって思われるよきっと」
咄嗟に出た言葉はそんなことで。
私はなぜ慌てているのかも分からないけれど、心の中でワタワタと言葉を選んでいた。
「…あー、いやまぁ」
「てか進展あった？連絡してまた少し経ったでしょ？」
そうだ、ふっかには昔の想い他人がいるじゃないか。
私のことを口説くわけなんてない。
今更ながらそれに気づいた時、どこか肩の力が抜けた気がした。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2024年3月29日 22時
