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あの日、どこか妖艶な目で見つめられながらあんなことを言われた瞬間に
誤魔化しが効かないほどに胸がドキッした。
"気づいてないの?Aも毎回赤くなってんの"
その言葉だけだと別に日常的な会話でしか無いのだけど、赤くなるのが可愛いだとかそんな前置きがあってからのこれ。
しかもそれを言うふっかの表情がいつになく色気があったというか、何かを狙う目をしていたというか。とにかく何だか今までは違う様子で固まってしまったのだ。
「悲観的だね、そんなことないと思うよ?」
「いやーそもそも出会いがないし、口説かれるような人なんて思い浮かばない」
「実は会社にAちゃんのこと気になってるって男がいるかもしんないよ」
今まで通り"恋とは無縁な女"の面をしながら阿部ちゃんと会話をしているけれど
あまりにもあの時のふっかがいつもと違くて
口説いてる…?
なんて疑いを持ってしまったのである。
「…いやぁ、無いな」
「あはは、バッサリ」
「一番好きになる可能性があるとしたら阿部ちゃんじゃん、どう考えても」
「あ、やめてよ?その複雑になるやつ」
「だって社内で一番仲良くて一番喋ってる男性は阿部ちゃんだよ?その選択肢無くしたらおじさんしかいないもん。でも好きじゃ無いもん」
「だからやめてってば」
ただ口説くにしてはちょっと分かりにくすぎないか…?
という感じもする。
別に赤くなってる私に可愛いと言ったわけではないし、潰れては無いにしても確実にあの時のふっかは酔っていた。
少しドキドキしてしまった自分が悔しい。
……悔しい?
「じゃあ阿部ちゃん」
「ん」
「私のこと口説いてみて」
あれがもし本当に口説き文句としての発言なら、私は結果的にどう思うんだろう。
「やだよ、何言ってんの」
「口説かれるなんてことないからさぁ、経験してみたいなと思って」
「全く気がない同僚に口説かれたってなんとも思わないでしょ」
「そういうんじゃなくてさー。ほら、いつか女の子口説く時のための練習?」
男子の口説き方を知ることでふっかのあの言葉の意味を知ろうとしたけど、そもそもあの言葉は遠回りすぎだし前置きがあってこそだ。
今彼に聞いてもあてにならないなと今更気づいた私はふざけて誤魔化そうとする。
「いくら可愛いAちゃんにでも今現在勝ち目ゼロの口説き勝負なんてしないよ」
「…えっ」
「普段の行動で好きにさせるし、覚悟しとけば?」
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2024年3月29日 22時