なんで ページ3
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お店を出て外の冷気に触れた途端、何だか視界がふわっと浮いた気がした。
いつもより飲んだ自覚はある。それはこの会が楽しいからつい…というのは建前で、何だかずっとぼんやりとした気持ちでイマイチ楽しめなかったから。
だからいつもより量を入れて誤魔化したり、そもそも会話に参加する事が少なかったから口に運ぶペースが早かったというのもある。
「じゃ、俺らはここでー」
「カップルはこの後も熱い夜を過ごすってか」
「変な事言うなよ。あれだ、羨ましいんだろ？」
「はぁ？」
私と違ってちゃんと楽しんだであろう3人はホクホクとした様子だった。凛はアルコールのせいなのかこの寒さのせいなのかほっぺたが赤くて、同性から見ても可愛いなと思う。
「A、じゃあね」
「あ、うん」
そんな凛に手を振られて、私も振り返す。
軽く手を上げたさっくんにも同様に手を振って、2人が前を向いたと同時に自分も手を下ろす。
「…じゃ、私も帰るね」
そのまま自宅方面へ足を進めようとすると、それを何かに阻まれて。
「付き合ってよ」
「…え？」
それは、私の腕を掴んだふっかの手。
「この辺にお気に入りの店あんの。絶対Aも気に入るから」
やけに優しく微笑んでそんな事を言う。
そして私の返事を待つことはなく、ほら行くぞーって背中を押して歩き始めた。
お酒のせいなのか抵抗する元気はなくて。
されるがままに歩き出し、程なくして着いたラーメン屋。
落ち着いた雰囲気で綺麗で、でも程よい老舗感があると言うか。全てが丁度いい、みたいなお店は今の私のテンションにぴったりなのかもしれない。
券売機の前でどれにする？と聞かれた私は一人前が入る気がしなかったので半ラーメンと答えた。
するとふっかは何も言わずにお金を入れて、そして半ラーメンのボタンを押す。
「え…払うよ」
「いいよ、付き合ってくれたお礼」
別に、いつもだって付き合ってるはずなのに。
なぜか今日は奢ってくれるらしいふっかは落ちてきた食券を手に取った。
そのまま自分の分のラーメンの食券も購入すると、私のと一緒に店員さんに渡す。空いてる席へと私を促してセルフサービスのお水を注ぎに行った。
「…ありがと」
「ん、ここまじ美味いから。楽しみにしてな」
お水を私の前に置くと同時に向かいに座る。
そして一口それを流し込んだふっかはふぅ、と一息ついてから私を見た。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2024年3月29日 22時
