赤い ページ18
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「……ちょっと！マジで全部食べてるし！」
そのまま数秒時が止まったような感覚がして、ハッとした私は不機嫌を装って文句を言った。本当はもうそんなのどうでもよくて、なぜ自分が今フリーズしてしまったのかと裏で頭をぶん回している。
「はいはいそっち全部あげるから。二杯目どーする？」
そんな私なんてお構いなく、揚げ出し豆腐をチラリと見てからメニュー表を開いたふっか。
「いやまだ全然飲んでないし…」
「んじゃお先、なんかつまみも頼もうぜ」
あっ、焼き鳥食べたいな…って。彼はもうメニューに夢中だ。どことなく機嫌がいい？いや、テンションが高い？気がするその様子に違和感を持つ。
それに彼は特別お酒が強い方ではなくむしろ少し弱い方だ。本人もそれを自覚しているはずなんだけど、確かにもう彼のグラスは空でペースが早いのが分かる。
「……ふっか」
そこまで順番に把握した時、単純に心配になってしまう。
「大丈夫？なんか…疲れてたりする？」
無理やりテンションを上げているのか、空元気なような気もしてきた。
「……っは、なんだよその顔」
「え」
「そんなこと気にしないで楽しく飲もうよ、華金だぞ？」
さっきまでとは一転、真剣なトーンで聞いた私が向けられたのはまた優しい表情だった。
ふわりと柔らかい笑顔でそんなことを言われて拍子抜けしてしまう。
「さみしーのよ、佐久間が取られて」
「…取られてって」
「んは、まぁそれは冗談だけどさ。Aと飲むの結構好きなんだよ、俺」
ほら、なに食べる？って。
散々自分が占領していたメニューをこちらに向けたふっか。
やっぱり、今日の彼はどこかおかしい。
さらに心配になったと同時に、ほんのりと赤くなった顔とその柔らかい表情に感じたことのない気持ちになる。
見たことないよ、今日のふっか。
その気持ちの正体なんて分かるわけなんてなくて、当たり前に対処の仕方も分かるはずもなく。
「…焼き鳥、食べたいんじゃないの？」
「ん、どれにするよ。俺つくね食べたいなー」
頬杖をついて焼き鳥のページを見下ろすその伏目と、女子として悔しくなるほどに長いまつげを見つめながら
私は無意識で、剥がれている部分のピンクベージュをそっと撫でるように隠した。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2024年3月29日 22時
