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「さっくんならちゃんと聞いてくれると思うよって言ってくれたって、凛がAのこと言ってたんだって。だから佐久間も感謝してるって」
「いやぁ、別に本当の事言っただけだけどねぇ」
「でもAがそう言わなかったら凛は佐久間に何も言えなかったし、佐久間も気づけないままだったんだろ？ナイスアシストじゃん」
失礼しまーすと、店員さんが飲み物を持ってきてくれる。二つともを受け取ったふっかはありがとうございまーすとお礼を言いながらその一つを私に差し出した。
「乾杯」
そしてカチンとぶつかったグラス。
「そりゃあさ、さっくんがめんどくさいなんて言うわけないじゃん？」
「俺らからすれば分かるけどさ、やっぱカップルだとそういう小さな事が気になっちゃうんでしょ。好きなんだから」
「そうなのかなぁ」
私たちが彼の性格を分かっているように、凛だってそれは分かっているだろうし。そもそも私たちよりも分かっているはずなのだ。
でも、恋というものがあるだけでそれが分からなくなってしまうほどにそれは何かに影響を及ぼすものなのだろうか。
「まぁ、佐久間が感謝してたよって話。それ本人に直接言えよって言ったんだけど、凛がもう恥ずかしいから話広げないで〜って連絡させてくれなかったってさ」
「ふふ、なんか乙女だね。凛」
もう恋をしていたのは何年も前。
そんな感覚は忘れていた。
「昔からそうだよな、Aって」
「え？」
彼がグラスを傾けるその手を見ながら、あの時の自分の失態を少しだけ思い出してそれを必死にぼかそうとしていた。
そんな中でまた私の意識を戻した彼の言葉。
「なんだろ、周りの人のことをすごく理解してさ。その上でかける言葉を選べる」
「選ぶ…？」
グラスを置いたふっかは柔らかく口角を上げる。
「誰かに何かを話す時って背中を押して欲しいとかこんな言葉をかけてほしいってさ、本人が思ってなくても無意識にあったりするんだよ。Aってそれをドンピシャで当ててくんの。それって相手を理解してないとできないでしょ？
だから相談とかそうじゃなくても話したくなるし、今もこうやって凛とか佐久間に頼られてるんじゃん？」
急にこんなに褒められて動揺してしまう。
嘘はなさそうなふっかの表情に、私はどうしていいか分からなくなってしまった。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2024年3月29日 22時
