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「おはよ」
そう声をかけられて顔を上げると、自分のデスクに座りがてら何かを手に持ってアピールしてくる同期。
「…あ、水筒」
「もちろん中身はあったかいお茶」
深いグリーンのシンプルな水筒。
やはり、買ったらしい。
「気をつけてね、朝だとまだ」
「あちっ」
「……ほら」
今の水筒の保温性は凄い。
そんな阿部ちゃんの様子に可愛いかよ、とまた思いながら自分の水筒をそーっと傾けて少しのお茶を流し込んだ。そしてデスクにそれを置いた時、ネイルが一部剥がれていることに気がつく。
あーあ、だらしないな。
その指先を見て何だか形容し難い気持ちになっていると、不思議そうな顔をした阿部ちゃんが私を見る。
「何か元気ないね、寝不足？」
「……いや、全然？」
どちらかというと昨日はすぐ寝た。
というか、早く寝てしまいたかったので無理やりベッドに入った。
そのおかげか朝はそれなりに早く起きれたのでこうやってお茶も淹れてきたし、お弁当もちゃんと作ってきた。もちろん卵焼きも入っている。
「阿部ちゃん、今日もお弁当？」
「ん？うん、起きれたし」
「そっかぁ、頑張ってるねぇ」
特に意味もなくそう彼に声をかけた。
そんな私が不思議だったのか首を傾げたように見えたけど、それに気づかないふりをしてまたお茶を傾けた。
ちなみに今日は週末。華金とはよく言ったもので、別に飲み会やらが凄く好きでもなければそもそも飲みに行くことがあまりない私にとっては一週間の疲れが溜まって結構だるい日。
とは言いつつも今日頑張れば明日は休みだの気持ちもあるので少し気は軽くなるのかもしれない。
「はー、阿部ちゃん。今日の会議がんばろうね」
思いっきり伸びをしながらそんなことを言う。
阿部ちゃんはやっぱり不思議な顔をしながらも「うん、そうだね」と返してくれた。
そんなこんなで始業時間も迫ってきたのでパソコンに向き合おうとすると、置いていた携帯が通知を知らせた。
"今日飲みに行かない？"
その文面だけを見た時は凛かなと思ったのだけど、左に目線を動かして見えた名前は違う人のものだった。
一瞬なぜか申し訳ない気持ちが浮かんだけれど
それには気づかないふりをした。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2024年3月29日 22時
