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「わっ」

「よ、追いついた」



そのまま無言で、携帯を見ているフリをしながらただ2人の後を着いて歩いていた。そして後少しでお店に着くくらいのタイミング、急に隣に人の気配を感じて。




「あ、おせーよお前」

「乗ってた電車止まったんだよー」



振り返ったさっくんに文句を言われている。




「じゃあ今日は深澤のおごりー」

「なんでだよ」




ふっかだった。





「ごめん」

「え?」



そんなふっかが、さっくんがまた前を見て凛と話し始めた瞬間に少し小さな声でそう言ってきた。



「カップルと1人じゃ気まずかったろ、余裕持って家出たんだけど」



私の身長に合わせて、少し体勢を低くして。




「…別にそんなことないけど。今更気まずくならないって」

「でも気遣ってたろ」




前で並ぶ2人の背中をチラッと見たふっか。
少しだけ笑って、また私を見た。




「幸せもんだよな、あいつら」




別に気を遣って後ろを歩いていた訳でもないし、勝手に一人で悶々としていただけだった。

ただふっかはそれを、私の気遣いという名の優しさだと捉えてしまったらしい。




「……当たり前だよ、私たちがくっつけたんだし」



それを否定するのも違ったし、でも受け入れるのも申し訳なくなって。どこか捻くれた返しをしてしまった私にふっかは優しく笑った。



「だよな、俺たちのおかげで生まれたカップルだもんな」



優しさがもどかしい。
いつもはやっぱりいい人だよなぁなんてぼーっと思うけど、なぜか今だけはモヤモヤの中に吸い込まれていってしまって。


やめてよ、変に優しくするの。


そんな事を思ってしまった自分が醜かった。




お店に入って4人の会が始まっても、何だかそのモヤモヤは消えてくれなくて。3人の会話を聞きながらグラスをただ傾けていると当たり前にふと心配されてしまう。




「A、どした。なんか調子悪い?」



その一声がふっかだったことにも、何だか変にモヤっとしてしまう。



「なんか悩んでる?聞くよー?3人もいるんだし愚痴でも何でもどんとこいだよ」

「マジ俺ら愚痴聞くには最高のメンバーだから」



そして明るくそう言ってくれる2人に、申し訳なくもなって。



「…ううん、久々に4人集まれたから。やっぱいいなぁってちょっと黄昏てただけだよ」



それっぽいことを言って誤魔化しながら笑って見せれば、待ち合わせ中にあんな事を言っていたさっくんが嬉しそうに笑ったから

また、罪悪感が募った。

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作者名:ぽぷら | 作成日時:2024年3月29日 22時

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