・ ページ32
・
「キューピッドの相棒」
「相棒…？」
そのままお茶を置いたところまで目で追った後、私を見つめた阿部ちゃん。
「その2人を一緒にキューピッドした男の子」
「…あぁ、それが？」
「その人のこと好きになんないの？」
ギク。
心の中でそんな漫画みたいな効果音が響いた。
「…ならないね」
「そこはさぁ、今度は私たちだね的な展開じゃないの？」
何故か文句を言われている。
やれやれ、とでも言うように阿部ちゃんはまたお弁当へと目線を向けた。
「漫画的展開だねぇ…残念ながら現実世界に生きてまして」
「漫画だって現実にある物語じゃん」
反論の仕方がズレてる気がする。でも一瞬確かにと思った私を許してほしい、それは正しい。
「その人もずっと仲良いくらいだからいい人なんじゃないの？」
「それはそうだけど……」
好きだったのは"かつて"である。
もしその気持ちが続いたのならばその漫画的展開ももしかしたらあり得たかもしれないけど…
「別に、友達としてしかみてないかな」
いや、あり得ない。ふっかだもん。
例え私の気持ちが続いてたとてあっちは私に見向きもしないだろう。
「あ」
「なに」
私の言葉に嘘は感じなかったのか、そっかぁと間延びした返しをした阿部ちゃんが最後のおかずを食べ終えた。
そんな時に思い浮かんだあの時の話。
「その人と話したんだけどね」
「うん」
「人のことなんて簡単に好きになれないよねって」
え、病んでる？と眉間に皺を寄せた阿部ちゃんを見て主語が足りなかったと。
「別に恋人ができるならできるで楽しいだろうしいらないとかじゃないの。周りに男性だっているし、いい人だなと思える人もいる。あ、人としてね」
変な所で共感し合ったあの話。
自分も最後のおかずを箸で摘みながら会話を思い起こす。
「例えば阿部ちゃん」
「ん？」
「仕事できる、かっこいい、優しい、仲良くしてくれてる」
「……怖いくらい褒めるね」
「普通にさ、好きになってもいいわけじゃん」
急にそんなことを言われた彼はさすがに少し動揺しているよう。さっきまで何だか強気に文句垂れてたのに。
「いやー…えぇ…そうなの？」
「実際大多数にモテてるんだし、好きになる要素は多いわけじゃん。ましてや同期で今だって2人でご飯食べてる。好きになる条件なんか揃ってそうじゃん。でもなんか、ならないの」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 905人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽぷら(プロフ) - ayaさん» ありがとうございます！もう少しでラストスパートなので、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです☺️ (4月8日 20時) (
レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 今回も好きなお話で一気に読みました！胸がきゅーっとなります！！ (3月24日 22時) (レス) @page47 id: ff23500b61 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - 優希さん» ありがとうございます☺️ゆっくり更新にはなりますが楽しんでいただければ幸いです！ (3月15日 21時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
優希(プロフ) - 見つけた瞬間飛び起きました👏もう面白くてわくわくしてます！😍 (3月5日 23時) (レス) id: 9e7ca0af4f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽぷら
| 作成日時：2024年3月1日 23時
