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「楽しいこと…」
「その2人は片想いの状態でも楽しかったし想い続けるのが苦じゃなかった。そりゃあ悩んだりとかあったかもだけど、基本的に好意的な相手なんだからテンション上がることの方が多かったんじゃないかな」
確かに、凛は私と話す時は悩んでいたりうだうだしてたけど結局さっくんといる時はいつも楽しそうだった。それはきっとさっくんもそうで、4人で遊んでいてもそっちのけで2人の世界なんてことはしょっちゅう。
それに比べてあの頃の私は
「あー…確かに、言えてる」
きっとふっかは私のことを好きにはならない。
ずっとそう思っていたから、好きになりたてのドキドキとふわふわはいつしか虚しさや苦しさになっていた。彼の姿を見ただけで辛い気持ちになることも多くて、2人きりになってもどこか心が重い。
そりゃあ、それを続けるのはしんどい。
「でしょ?まぁ、ものすごく一途とかメンタルが鬼強くてそのくらい想い続けてるパターンもなくはないと思うけどね」
「…いや、いつも楽しそうだったもんあの子達。今すごく納得した」
とてもしっくりきたその見解に尊敬の目で阿部ちゃんを見た。すると彼はそれを感じ取ったのかちょっと大袈裟なくらいにニッコリと笑って私を見る。
「阿部大先生」
「えーなんかそれはヤダ、俺別に恋愛のことなんか分かんないよ?」
「そんなに確信ついといて分かんないは無理があるかと…」
「当たり前のこと言っただけー」
かと思えば「ぶぅー」だなんて効果音を付けたくなるような可愛い不満顔をするからこの人は表情豊かだなだと思う。
この人の彼女になる人は楽しそうだ。
「阿部ちゃんはきっと、しんどい片想いをさせた人がいっぱいいるんだろうねぇ」
でも、辛い思いをした人の方が多いんだろう。
「何それー、嫌味?」
「違うよ、個人的には褒めてる」
「俺個人的には嫌味」
「あっ」
残り一つの卵焼きを躊躇なくひょいっと取られてしまった。一瞬のうちにパクっと彼の口に吸い込まれていく。
「卵焼き…!」
「あ、おいしー。Aちゃんだって誰かしらのことしんどくさせてると思うなぁ〜こんだけ美味しいお弁当作れるくらいだし?」
やられたらやり返す。
この人の執念を見た。
「この…」
「んふふ、ごちそうさまでしたぁ」
お互いに空になった弁当箱。
颯爽と荷物をまとめた阿部ちゃんはどうせ私も同じところに戻るのに可愛く手を振って去っていった。
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ぽぷら(プロフ) - ayaさん» ありがとうございます!もう少しでラストスパートなので、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです☺️ (4月8日 20時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 今回も好きなお話で一気に読みました!胸がきゅーっとなります!! (3月24日 22時) (レス) @page47 id: ff23500b61 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぷら(プロフ) - 優希さん» ありがとうございます☺️ゆっくり更新にはなりますが楽しんでいただければ幸いです! (3月15日 21時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
優希(プロフ) - 見つけた瞬間飛び起きました👏もう面白くてわくわくしてます!😍 (3月5日 23時) (レス) id: 9e7ca0af4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2024年3月1日 23時