・ ページ33
・
「……だからさ？サークルに入れるとかじゃなくてAちゃんを振り向かせよう大作戦に変えたのに…Aちゃん手ごわいんだもん。文化祭でデートって言っても、手を掴むんじゃなくて繋いでも、かっこよく酔っ払いから助けても全然振り向いてくれやしない」
回される腕に力が入ってさらに体が密着した。佐久間くんのなのか私のなのか、何だかすっごく心臓の音が大きく感じるのは気のせいだろうか。
「俺心折れそうでさ。あの写真みたいな笑顔のAちゃんの隣には別の人がいるのかなって。俺はそこには行けないのかなって。やっぱり、ダンスがないと俺らは会う理由が生まれないのかなって」
佐久間くんが私の肩に乗せている顔を動かした。この状況でどうしたらいいか分からない私はずっと前を向いていたけれど
「Aちゃん」
その、いつもよりも甘くて深い声に引き寄せられる様に目を合わせてしまった。
「……可愛い、近くで見るともっと可愛い」
またそれも初めて見る表情で、そしてあまりの距離の高さに顔が熱くなるのが分かった。
「泣きながら会いたかったなんて言われたらさ、俺期待しちゃうんだけどな」
嫌だった。陽キャに絡まれて最悪だって、私の水曜日を返してって。
「でもさぁ、最初は腕掴むだけでも怖いとか嫌だとか言われてたのに今じゃこれよ？嫌がらないじゃん。これでそんなんじゃないなんて言わないよね？」
なのに、いつしか彼がいる水曜日は私にとっても大事な時間になっていた。
私佐久間くんに会いたかったんだ、佐久間くんと会えなくなるのが嫌だったんだ。佐久間くんに絡まれるのはもうとっくに嫌じゃなくなっていて、自ら求めるようにすらなっていたんだ。
自分の中でその事実に気付いた時に、この包まれている温かさと感じるドキドキが一層強く感じられる様な気がして。
「…建築棟こなくなった」
「それはぁ…俺だって忙しい時もあるよ」
「やっと終わったってのびのびしてたって阿部くん言ってた」
「え、あー……えへへ、あべちゃん言うねぇ」
「水曜日だけだったら会いたくない」
「ねぇ思いっきり引っぱたかれたから許して？阿部ちゃん俺にはマジで容赦ないんだから」
「阿部くん、佐久間くんのこと大好きじゃん」
「それも嬉しいけどー、俺この子に好きになってほしいなぁ」
自分の気持ちが分かってもなお、私は癖の様に口答えをしてしまうらしい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凪(プロフ) - このお話が大好きなので非公開でちょっとショックだったので公開されてて嬉しかったです！やっぱりきゅんきゅんしました♡ありがとうございます☺️ (12月6日 19時) (
レス) @page40 id: 3311bc9b6e (このIDを非表示/違反報告)
Gass - ぽんさん» 全然気分悪かったわけじゃないです！作者さんの中で建築が計算ゴリゴリ、図面ガリガリってイメージなのかなと思ったので笑そんなお堅い理系な感じじゃないんですよーどちらかというとデザイン系ですよーっていうのを伝えたかったんです笑 (2021年6月10日 12時) (レス) id: df41a6f599 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(プロフ) - Gassさん» ご気分を害されてたらすみません…！私自身も建築系のお友達の課題だったり作品をすごいなぁ、芸術的だなぁと思いながら見てるので…お話の流れ的にそう書いてしまったのをお許しください……！ (2021年6月10日 4時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(プロフ) - Gassさん» わああ！建築を学ばれてる方……！少しだけの知識で書いてしまってるのでお恥ずかしい限りです…笑 お読みいただきありがとうございます！ (2021年6月10日 4時) (レス) id: 0e689a64ff (このIDを非表示/違反報告)
Gass - 今日最初から最後まで一気に拝読しました。私自身建築学科に在籍してるので自己投影してしまいました笑とっても主人公ちゃんと佐久間さんが素敵に描かれていて面白かったです！でも一つだけ建築も大分アートですよーというのだけお伝えしたいです笑デッサンもします笑 (2021年6月10日 2時) (レス) id: df41a6f599 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽぷら
| 作成日時：2021年5月21日 22時
