陰キャとさくまの水曜日 2

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「佐久間になんかした？」


いつになく熱く語ってる教授の建築トークを聞き流しながら眠気と戦っていた時に隣の阿部くんに寝るなと肘で小突かれる。


「なんか…？ってなに？」

「最近すげぇ楽しそう、ついこの間までしょげてたのに」


昨日遅かったんだよ寝かせてくれと思っているとこっちを見て至って真面目に聞いてきた。


「いつになくご機嫌だしサークル中見たことない振り一人で楽しそうに踊ってるし。絶対Aちゃんなんかしたでしょ」

「いや機嫌いい理由が私である根拠ないでしょ」

「根拠しかないわ。まじで何した？」



その根拠は教えてくれないらしい彼にじっと見つめられ、何かしたかー？と考えてみるけど。何も思いつかないし強いて言えば水曜に2人で踊るようになったことだろうか。


「…踊ってる？」

「え、踊ってるって？」

「…私の高校の時の動画、見たいって言うから送ったらそれ覚えてきたの。それを一緒に踊って…っていうのが最近あった」


あんなことがあった翌週、本当に佐久間くんは待っていた。私の姿にぱあっと目を輝かせたあの表情がなぜか強く印象に残っている。


「あー、それだわ」

「…これなの？」

「俺らほったらかして携帯見て楽しそーに踊ってると思ったら。別にいいんだけどね」


そもそもダンスサークルって何をしているんだろうか、そんな疑問が浮かぶ。そんな一人で勝手に踊ってていいものなのだろうか。



「…阿部くんって佐久間くんのこと大好きだよね」

「え、なんだそれ」

「だって常に佐久間くんの話してるじゃん」

「そりゃそうでしょ。Aちゃんにふっかとかダテさんの話しても分かんないでしょ」

「…あの人たち？」

「面白いよ、他の4人も」



誰がふっかで誰がダテさんなのかは分からないけど多分その言葉に嘘はないんだろう。そう思ってしまうようになったのも佐久間くんのあの笑顔のせいなのだろうか。



「興味あんのよ」

「…とは」

「面白そうって思ってさ、だから構ってる」

「何のこと」

「あ、終わった。佐久間と学食？」

「いや、最近現れないし」


また意味が分からないことを言い出した彼に早くあの女の子たちのとこ行きなさいよと皮肉の気持ちを持つ。最近女子達からの目線が痛い。


「じゃあ今日は俺とでもどう？」

「遠慮しとく、不特定多数に殺されそうだから」


何もかも分かってるように笑った阿部くんを残して教室を出た。
あの人、自分がモテてるの知ってるな。

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