原作マイリフレクション 4

ひらく ページ22

・


自分の目的とする改札に向かう。
何だか急にふわふわしてきて今更アルコールが回ったのかなぁなんて呑気な事を考えた。

歩きながら機械的な音に近づいて行って、ポケットに入れていた携帯を取り出そうとした。





シャンっ





その時聞いたことのある音がして、思わず振り返って視線を落としたその先。そこにはツナみたいなあの猫が私をじっと見つめていた。



ポケットに入れっぱなしにする癖、直さないとな。こうやって何かを取り出そうとした拍子によく落とすんだから。そして無くすんだから。家の鍵、大事なもの。



その鍵を拾ってバッグに入れた。そして今度こそ改札を抜けようとポケットに手を入れて携帯を掴み

その先にかざそうとした。






「待って…！」





改札は開かない。
タッチ面に携帯が届いていない。



振り向いた先
肩で息をする人、その人の手は私の腕を掴んでいた。





「え…ど、どうしたの…？」

「はぁ…ごめん、こっち…」




改札の前から私を引き通路の隅に進んでいく。

遅い時間だからか、たまたまこの駅だからか。
人はそんなにいなくて、通るはずだった改札の音がやけに大きく響いていた。





「……なんか、分かんないけど……

今…伝えなきゃって思って」





その人は息を整えながら必死に言葉を紡いでいく。
走ってきたのだろうか、お酒では変わらなかった顔が少し赤くなっていた。





「ほんとに…なんとなく、なんだけど……」





一度大きく息を吸って吐いた。
そして真っすぐに私を見た彼。







「後悔…する、って…思って……」






そして真っすぐに私を見た彼。








「俺はっ……俺は！

Aを主人公にしたい」







その言葉も、真っすぐだった。








「幸せにしたい」







囚われたように、目が離せない。









「ハッピーエンド…

いや、終わらせない」








胸が静かに、ドクドクと鳴り始めて










「俺はずっとAの幸せを守る」









閉じかけたページが開かれた感覚がした。









「だから、俺の主人公になってほしい」












いや、閉じようとしたその手をそっと掴んで


一緒に開いてくれようだった。

ゴール→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す