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「……分からないですけど、今の話を聞く限りはその可能性が高いんですかね」
「御陰さんとはもうあまり会ってないんでしょ?」
「はい、もう別のフロアにいらっしゃるので……」
「それが好都合なのかもしれないね。一緒に仕事をするわけでもなければ顔も合わせないんだし…まさか自分が主犯だなんてバレるとは思わない」
確かに確証はつけない。
でも、こうなったら御陰さんが事の発端だと思わざるを得ない。
「……Aさん、編集部行こう」
「え?」
「編集長さんと話したい、きっと耳に入ってるよね?」
「それは…そうですけど……でもっ、私が話してどうにかするので!伝言という形で」
「ううん、絶対俺の口から言った方がいい。てか最初からそのつもりだった。Aさんから言ってくれなくても何があったのか聞きだすつもりだったし、それが俺に関わることだったらちゃんと自分も参加しようと思ってた。絶対今の連載成功させたいもん、Aさんと俺で」
今日佐久間さんが嫁Tを着ていなかった理由。
それは外に出る用事があるからで、その用事というものは私と共に会社に出向くというものだった。
それが分かった時、
「……Aさん」
「…すみません。佐久間さん、ありがとうございます」
2人の前であんなに泣いたのに、また目の奥が熱くなってしまう。
「ちゃんと誰かに相談できた?」
それをぐっと堪えて顔を上げた時、佐久間さんは優しい表情でそう聞いた。
「……はい」
「ん、そっか。よかった。俺にもちゃんと言ってくれてありがと。きっとその人のおかげなんだよね?」
また亮平と辰哉の温かさがじんわりと蘇る。
きっとあの2人が根気よく聞き出してくれなかったら、私はまだ社内の視線に怯えて仕事が手に付かないままだったろうし、犯人のヒントにも辿り着けなかった。
「はい、そうです」
ありがとうって、伝えなきゃな。
「……もしかしてー、例の幼馴染さんだったりする?」
彼らの事を思い出しているのを見透かしたように、佐久間さんはそんなことを聞きながらニヤリと口角を上げた。
ドキッとして、一瞬動揺してしまう。
「いや…違いますよ…友達です、大学の時の…」
そして何だか恥ずかしくてそう嘘をついてしまって。
「…ふふっ、そっか。よーし!編集部カチコミにいくぞー!なんか漫画の主人公みたいだなぁ!Aさんとダブル主人公!もちろん結末はハッピーエンドだぜっ!」
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2023年9月2日 23時