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「なんでそんなこと言うのか、だっけ？」
「…うん」
周りの話声と静寂が混ざったような、中途半端な音の中。
花火の前の不思議な空気感の中で亮平は話し始めた。
「昔は親に言われて、いわば刷り込まれた気持ちだったのに。大人になっていつの間にか自分自身がそう思ってることに気付いたからかな」
「…どういうこと」
「Aを守らなきゃって」
俯きがちな横顔は綺麗だった。
「正直、もう家族みたいなものというか。本当に幼馴染っていう関係性のあるあるなんだろうけど…その感覚で恋愛対象として見るなんて無いだろうなって思ってた。これは俺的にはいい意味なんだけど、何があってもずっと仲良しでいれるっていうか。
でも、最近よく会うようになって…なんだろう。やっぱりこの子は俺の事を一番分かってくれるし、一緒に居て楽しいし…それって特別だよなぁって思って。そしたら不思議と幼馴染じゃなくて“好きな人”っていう存在に当てはめる方がしっくりきてる自分がいたんだよね」
実際に彼の言葉で聞くと重みが違った。
察しているだけ、そんな状況とは全く違った。
心がぎゅーっとなる。
「もっと一緒にいたいなとか、3人じゃなくて2人っきりがいいなとか。ここ一緒にいきたい、教えてあげたい。次から次へとそんな気持ちが湧いてきて、Aが笑ってくれると嬉しいし、それと同時に…」
ゆっくりと横を向いた亮平。
「悲しそうな顔をしてたり、昔と変わらず自分の存在を否定しちゃってるのを見ると俺も悲しくて」
綺麗な瞳が私を捉える。
「一番近くでAの事を守ってあげられる存在になりたいって思ったの。Aの笑顔とか、気持ちとか、心とか…とにかく全てを守りたい。俺は何回もAに救われてるし、それがどれだけ自分にとって嬉しい事だったのかも再確認したから」
少し周りがざわざわしてきた。
何かの始まりを感じさせるような、そんな雰囲気。
「Aが俺の隣で笑っててくれたら、俺は幸せだなって思ったから」
ヒュー…と、夏の音がした。
でも彼は目線を動かさず、私をじっと見つめている。
「好きです、俺と付き合ってください」
言葉が聞こえた瞬間に咲いた花火。
その明かりで照らされている彼の顔はやっぱり美しくて、どこか私の知ってる彼とは違うように見えた。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2023年9月2日 23時
