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なぜかその笑顔にドキドキしちゃって、待っている時間が秒で過ぎ去ってしまった。
両手に食べ物と飲み物を抱えて戻ってきた亮平はお金を渡そうとすれば一緒に来てくれたお礼だなんて言って受け取ってくれなくて。
隣、ギリギリ肩が触れ合うかどうかの距離に座った彼からは蒸し暑い中で汗もかいてるだろうに爽やかな香りがした。変な感じ、今まで気づかなかったのは何でだろう。
「間に合ったー」
「……ここ、知らなかった。いつもあっちで見てた」
「実は調べたの」
「え、そうなの」
「うん、親に聞いたりネットで調べたりしてね。でもローカルなお祭りじゃん？だからあんま有益な情報出てこなくてさー、情報源は佐々木のおじさん」
「え、佐々木って…あの？」
「ふふ、そう。元気だったよ」
近所のおじさん。私たちが子供の頃からおじさんと呼ばれる世代だったから…多分今は結構お年を召してるんじゃないだろうか。元気なんだ、よかった。
「どうせならね、いい所で見たいじゃん」
そして、わざわざ調べてくる亮平のその真意が。考えすぎかもしれないけど分かってしまったような気がして。
「……何で？」
「何でって、そりゃあAと花火見れるんだもん」
その返しに、考えが正しいんだろうなとも感じて。
「…亮平」
「ん？」
私は、勇気を出して“演じる”事にした。
亮平の事だから、何となく今日を大切な日にするんじゃないかと思ってたけど。先手を打たなきゃ勇気を出せないような気がして。
「私さ、亮平が言ってくれた“俺の言葉だけでも受け止めて”って。その意味が分かるようで分からないというか…なんでそんなこと言ってくれるんだろうってずっと思ってたの」
すぐ横の、彼の顔が私に向く。
「……亮平が怒ってくれるのも、さ」
彼自身も何かに気付いたようなそんな様子だった。
「……俺、お祭りとかさ。そういうベタなシチュエーション大好きなんだよね。花火を見てその後にーとか、考えてたんだけどな。ちょっとくらい気遣って待ってくれてもいいじゃん」
困ったように笑う。
「先に言っておきたかったの。私は正直、そういう気持ちが自分の中にあるのかはよく分かってない。その上で亮平の思ってることが聞きたいって我儘言いたかった」
「…そっか」
ごめんね、我儘で。
でも、そうじゃないと向き合えない気がしたんだ。
「いいよ、我儘聞いてあげる」
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2023年9月2日 23時
