・ ページ46
・
「…さっき、写真見てきたんだよ」
「写真?」
「うん、祭りのときの。寛平と浴衣着て3人で綿あめ食べてた」
亮平も、私の目線を辿ったのか懐かしむように呟く。
「小さい子の和装って何であんなに可愛いんだろうね」
「小さい子は何着ても可愛いって、サイズ感が可愛いもん」
「覚えてるよ、水色の浴衣」
「あー、私?」
そうだったな。
小さい頃、サイズアウトして着れなくなるまで毎年来ていた水色の可愛らしい浴衣。帯はピンクでいかにも小さい子供が好きな配色だ。
「可愛いなって」
「…ふーん」
「俺直接言ってたと思うけどなー?覚えてない?」
正直、覚えていない。
ぼんやりと3人で来ていた記憶はあるけれど、さすがにその頃の記憶なんて誰しもが曖昧だろう。
「…亮平はグレーっぽいやつじゃなかった?」
「そうそう、多分まだ実家にあるよ。探せば」
「私もあるのかなぁ、どうなんだろ」
辰哉は紺色だった気がする。あの頃は普段と違う格好をするってだけで何だか嬉しかったし、2人もテンションが高かったよな。はしゃいでよくママたちに怒られてた。
「ねぇ」
「ん?」
ぼんやりなままの記憶を辿っているとちょんちょんと肩を突かれて。ついて行った先には綿あめの屋台が。
「ひとつください」
気付けばそれをご購入。
「懐かしくなっちゃった」
「綿あめなんて…それこそ小さい頃食べたきりな気がする」
「ね、ほら」
棒に巻き付いたふわふわ。
その一部をつまんで私の口元に差し出した亮平。
「ん…あまぁ」
こんなに甘かったっけ…そんな味。
「甘いねぇ」
自身も一口含むと何とも言えない表情をした。正直ね、食べづらいしベタベタになるしただ甘いだけって言うか…大人になってからだとちょっと厄介な食べ物かもしれない。
「…ふふ」
「なんだよ」
「懐かしさに負けて買ってちょっと失敗したなーって思ってる?」
「うるさいなー、風情ってもんがあるじゃん」
ほら食べてって、また私の前にさっきより多めに差し出してきた。この大きさが私の口に入り切るとでも?
「んぐ、」
「ふはは」
「ちょ、くち、べたべた…」
「もー、だから風情を感じなよ」
挑戦して見事に口の周りを溶けた綿だらけにしてしまった私を見て笑う。軽く腕の辺りを叩くといたーいだなんて間抜けな声出してわざとよろめいた。
1584人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽぷら | 作成日時:2023年9月2日 23時