我儘と花火 ページ45
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賑わいの雰囲気が少し先に。
私を見つけると必ず手を振ってくれるのは昔から変わらないなって。
「やっほ」
「なんかいつも私が待たせてるよね…ごめんね」
「ううん、俺実家寄ってきたから早かっただけ。まだ待ち合わせ時間より早いじゃん」
確かに5分前に着いたのに彼の姿は既にあって。片手にハンディファンを持って空を眺めていた亮平を見つけてまた遅れてしまったと思ったのだけど。
「蒸し暑いねぇ」
歩き出すとその片手は自分の顔より低い位置に。風が私の首元辺りにあたっていて、彼は全くその恩恵を受けられていない。
「…ありがと、涼しい」
「でしょ?変わるのかなーってちょっと疑ってたんだけど、文明の利器には素直にお世話になるのがいいみたいだねぇ」
背の高い彼は私を見下ろして笑う。
いつもより小さめのショルダーバッグにラフな私服。休日で、地元の中で、さらに実家が近いからこその最低限の荷物。そんな姿を見れるのはきっと私と辰哉くらいなんだろうな。
「あれ、こんな感じだったっけ?なんていうか…規模感?」
「んー、もっと先まで屋台あった気もする」
「だよね?」
「……私たちが大きくなったのかな」
「えぇ、身長そんな変わんないよ?」
クスクスと笑っている亮平を見上げると懐かしさも感じれば新鮮さも感じた。一緒に行ったことはあるけれど2人ではないし、そもそも小さい頃の記憶は朧気だし。
昔よりもこじんまりとしたような気がするお祭り。屋台が並ぶ道をゆっくりと歩いて行った。
「何食べるー?」
「亮平何食べたい」
「えー?やっぱ焼きそばはいきたいしー、あっフランクフルトあんじゃん!」
歩きながら何か宝物を見つけたかのように屋台に目を輝かせる亮平は思わず可愛いなと思ってしまうくらいには無邪気で。こっそりと笑ったのに周りのガヤガヤした音が凄くて、声量の感覚が取れていなかったのか気づかれてしまった。
「なに笑ってんのー」
「いや、亮平楽しそうだなって」
「そりゃあさ?久々に来れたんだもん。しかもAと!」
わざわざ強調してそう言うのは無意識なんだろうか。それとも、何かを私に気付いてほしいからなのか。
「……そうだね、久々にこれてよかったな」
あの頃の私たちのように、親に手を引かれている小さい子供達やきっと中高生であろう子たちを見つめながら、微かな記憶に重ねて呟いた。
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2023年9月2日 23時