"彼女は" ページ42
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「それね、俺なりの解釈というか…しいちゃんの性格を考えた時に浮かんできたものなんだけど」
佐久間さんは穏やかな表情のまま。詩香を、自分が生み出したキャラクターを愛おしむ気持ちが伝わってきた。
「きっとしいちゃんは都和と陽斗の好意には薄々気づいてる。まぁ2人のアプローチも段々と分かりやすくなってきたし、幼馴染だとしても…ってね。しいちゃんも大人なわけだから」
「…そう、ですか」
「気づいてるからこその気持ちなんだよね。なぜかというと、しいちゃん、自分を認めてあげるのがとことん苦手な子だから」
思わず目を見開いてしまった。
なぜかドクリと、一つ心臓が疼いて。
「だから自分の気持ちなんてどうでもいいの。好きだろうがそうじゃなかろうが、2人が凄く素敵な人だって思ってて大事だからこそ“私なんかを好きにならないで”って思っちゃうんだよね」
佐久間さんはバッグから一枚の原稿を取り出した。そして、恐怖に耐えているようなぎゅっと手を握っている詩香のイラストを眺め始める。
「だから2人に想われる事は申し訳なくて、やめてほしいとさえ思っちゃう。でも2人は詩香にアプローチをし続けていて、嫌でも想われているっていうその事実に気付いちゃって。その事実が“怖い”んだよ。だから表面上だけでも気づかないフリをして、2人を避けてみたりしちゃうんだよね」
一度鳴って収まったはずの心臓が気づけばかなりの早さで動いていた。今佐久間さんは詩香の話をしている。決して、モデルであろうとも私の事ではないはずだ。
なのに
「2人と向き合わなきゃいけないのは分かってるし、自分の臆病さにも気づきつつある。でも簡単にはその思考を変えられない。そんな自分に苦しむんだよね」
まるで、私の中身を丸裸にされたみたいだったから。
自分でも必死に気づかないフリをしていたその気持ちに。
「Aさん」
「…はい」
佐久間さんは丁寧にその原稿をしまった。
そしてまた私の方を見る。
「これはあくまでも詩香の話ね？でもなんか、今の一言が詩香すぎて心配になっちゃった」
「そんな…私別に…」
「もしも！もしもの話ね？Aさんが今後そんな気持ちになっちゃうことがあったら、とりあえずこの漫画思い出してみて。ハッピーエンドの道筋が見えてくるかもしれない」
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2023年9月2日 23時
