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「それ…つまりどっちとくっつくかを私のあれで決めちゃうってことですか…?」
「まぁそうとも言えるよねぇ。全然まだ先の話だけど」
「えぇ…」
今のところどっちかに偏った演出だったり描写はない。SNSや届く感想の中にもどっちとくっつくのかと考察がされていたりそれこそ都和派なのか陽斗派なのかで盛り上がっていたりする。
「まぁシンプルにさ、都和と陽斗って考えないで一人一人の男性として考えてみてどっちがタイプかな〜とか」
そう言われて考えてみる。それぞれの性格や今までの行動、言葉…2人がどんな人物なのかを改めて頭の中でおさらいする。
2人とも、やはり根底にあるのは優しさ。人を思いやるだとか大切にすることがベースにあって、それぞれのベクトルでそれを表している。でもそれだけじゃなくてちゃんと自分の芯みたいなのは持っているし……
あぁ
「……難しいですね」
何で私はいつの間にか都和と陽斗をあの2人にすり替えてしまうんだろうか。
「2人とも自分にはもったいなすぎるくらいの人物というか。タイプとかどうとかの前に隣に並ぶのがおこがましくて…選ぶのも申し訳ないと言うか、そんな気持ちになっちゃいますね」
ねぇ、2人とも。
何で私なんかをさ……
「くふっ」
「え?」
どこか意識を別のところに飛ばしていた私を引き戻したのは佐久間さんの笑った音。
「ふふ、ごめんごめん。笑うところじゃないのは分かってるんだけど…あまりにもAさんがしいちゃん過ぎて」
「詩香…ですか?」
「俺がこれから描こうと思ってたしいちゃんのまんま」
佐久間さんは持っていたスプーンを置いて私を優しい目で見つめた。
「この号で、しいちゃんが“怖い”って言ってたの覚えてる?」
「…はい」
覚えてるどころか印象に強く残っていた。詩香の思う怖さと私の思う怖さが一致しているかは分からないけど。きっと次号以降に描かれるのだろう。
でも、佐久間さんが言う通りこの物語はハッピーエンドらしいから。彼女はきっとその怖さを克服するんだと思う。
その進んでいく詩歌を私は“演じる”必要があるのかもしれないとあの時思ったから。でも、まだ見ぬこれからの詩香が進むその道を私は演じられる自信がここ最近の2人との時間で失われていた。
主人公には、やっぱりなれない気がすると。
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作者名:ぽぷら | 作成日時:2023年9月2日 23時