推し ページ39
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「はぁ…」
「何ため息ついてんのー？」
「うぇ！？」
会社の廊下を歩いていたらここでは聞こえないはずの声が聞こえた。
「佐久間さん…？」
「あれ、聞いてないー？受付でさっき連絡しときますーって」
その時、後ろから佐倉さーんと呼ぶ声が聞こえて。それで全てを察した私は佐久間さんの姿を見つけたその社員さんに会釈をした。その人も分かったようで穏やかに笑ってその場を去る。
「どうしたんですか？」
「こないだ見せた原稿あるじゃん？その続き、結構大幅に変えたいとこが出てきてさ。近くに用あったからついでに確認してもらいたいなって、下描き直したのよ」
「あぁ…そうだったんですか。たしか…今部屋全部埋まってるので外出てカフェにでも入ります？」
「んにゃ、急にごめんねー。連絡しときゃよかった」
「いえ、今日余裕ありますし全然。入り口で待っててもらえますか？」
少ししたら休憩に出ようと思ってたし丁度いい。それに1人で黙々作業の日だったがために、ふと2人のことを思い出してしまって手が止まりがちで。
気分転換だ。
そう思って荷物をまとめてフロアを出た。
「佐久間さん、お昼まだだったらついでにどうですか？」
「ぜひー、ご馳走してあげるぅ」
「え、私がそのつもりだったんですけど」
「いいのいいの、かっこつけさしてくれや」
わざわざ来てくれたし日々お世話になりまくってるからと誘ったのに。そう言われてしまうともうなんとも言えなくなる。
いい感じのランチができそうな店に入り、注文を済ませるとバッグから出してくる封筒。
「最後の方を少し変えただけなんだけどね」
「えっと、確か都和と陽斗が…」
「そう、バチバチのところね」
この間確認した流れだと、その2人がお互い詩香のことが好きだと知ってしまいちょっとシリアスな空気感が漂うシーン。この号はそれで終わる。
「あっ、それ自体をもう無くすってことですか？」
「うん。ライバルがいるって分かっちゃうと焦りも出てくるから行動が大胆になるだろうし、そうするとストーリーの展開も早くせざるを得ないなと思って。そうするとこれから描きたい要素とか展開を自然に入れられないなぁってね」
「なるほど」
変更点としては都和と陽斗はこの先も相手が詩香のことを好きだとは知らないまま進む流れにする。なのでそのシーンは全て無くなった。
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2023年9月2日 23時
