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「もうすぐお祭りだよね」
そんな一言に少し心臓が跳ねる。
そう、この間調べた日程はもうすぐそこまで迫っていた。
「…あー、そうだね。いつ？」
「次の連休じゃない？母さんがそう言ってた気がする」
知ってるけどあえて知らないふりをして。
なんて事ないように飲み物を口に流す。
「大学の時にふらっと見に行ってきりだなぁ」
「俺もそんな感じかな。都会の大きいお祭りもいいけど、やっぱああいう地元のこじんまりとした雰囲気がよかったりするよね」
この国には本当にたくさんのところでお祭りがあるものだ。大きいものから小さいものまで。地元のお祭り、という言葉から連想されるのは思い出だとか人によっては青春だなんて言う人もいるかもしれない。
「あー、うん」
「ねぇ、行ってみない？」
亮平は少し身を乗り出してそう言った。
正直、予想通りだった。
「……亮平ってさ」
自分の恐怖を覚悟して。
なるべくそれとなく聞くように。
「なんで、私のことたくさん誘ってくれるの？」
料理を口に運びながら、本当に何気なく聞いただけと雰囲気を出してつぶやいた。
すると亮平は少しだけ間を空けた後に穏やかに笑って私を見る。そして彼もまた料理を控えめに一口運び、何気なく言葉を返したのだった。
「何でって？」
しかも、質問返し。
「…亮平なら友達もたくさんいるだろうし。数え切れないくらい顔合わせてる私よりも他の人と行った方がが楽しいだろうにと思って」
また、自分の恐怖が大きくならざるを得ない事を聞くことになる。
「ほーんと、Aは頑固だね」
そんな私に、何かを差し出しながらそう言った亮平。目の前のそれは彼のお皿の上にあったもの。
「美味しいよ、一口あげる」
口開けてーって、いつかのように。
「…ん、おいし」
「でしょ？」
同じものを彼もまた一口食べる。
「美味しいものは共有したいじゃん」
「え？」
「楽しいもの、気になるもの、興味があるものはつい共有したくなるしその共有したいって気持ちは誰にでも思う事じゃないよ。俺はAだからそう思うし、Aとなら色んなことを一緒に楽しめるなって思うから誘うし、色々共有する」
それを飲み込んで箸を置く。
「また気づかないうちに自分の価値下げてるよ。Aのことを否定するってことは、Aと一緒にいる俺のことも否定してるってことなんだよ」
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作者名：ぽぷら
| 作成日時：2023年9月2日 23時
